研究課題/領域番号 |
23520414
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研究機関 | 独立行政法人水産大学校 |
研究代表者 |
中島 邦雄 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 教授 (00416455)
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研究分担者 |
島村 賢一 久留米大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60258366)
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 教授 (60400206)
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キーワード | 独文学 / ファシズム / ロマン主義 / フェミニズム / 神話学 |
研究概要 |
平成24年度に引き続き、バッハオーフェンの『両洋の神話』へのA.ボイムラーの序文「ロマン主義の神話学者バッハオーフェン」の翻訳を行った。各自が担当した翻訳部分の相互添削作業を行い、翻訳の最終稿を目指した。ラテン語とギリシア語の最終的確認作業を残して、翻訳は完成した。 業績は発表論文4本と、口頭発表1本である。これらの業績のうち、島村賢一は次のことを示した。すなわち、バッハオーフェンの母権制論へのボイムラーにおける感嘆的評価によって一見推測されるフェミニズムへの姿勢は、女性を、母的存在へと限定する上からの、反フェミニズムの民族中心の姿勢に収められてしまうこととなっていること、この母性反フェミニズムは、ゲルマン法の伝統とつながっていて、そのためローマ帝国の版図だった地にその後出現した国々と比べて、ドイツに固有且つ本質的な様態であることである。嶋﨑順子は、イェーナのロマン主義を批判しハイデルベルクのロマン主義を賞賛するボイムラーのあり方に全体主義への強い志向を見いだした。嶋﨑啓は、J.グリムには「母語」への賞賛はあっても「母」の賞賛の言葉は見られず、したがって「序文」にはボイムラーがJ.グリムを無理に自らの主張へと取り込もうとする曲解が見られることを明らかにしている。中島邦雄は、ボイムラーの「深さ」を追求する神話学と、対立的要素の調和にもとづく「フマニスムス」を神話学における客観性の原理と考えるケレーニイとを比較し、ボイムラーのあり方が必然的に客観性を失してオカルト的な非合理主義へと近づくことを明らかにした。 研究者と研究協力者全員が「研究目的」および「研究計画・方法」に沿って、それぞれの観点から順調にA.ボイムラーに関する研究を進め、たんに文献学的なゲルマ二スティックの枠を広げ、アクチュアルな現代思想であるフェミニズムやロマン主義再評価にも、これまでにない観点から貢献した。
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