研究課題/領域番号 |
23520417
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大塚 秀高 埼玉大学, 教養学部, 教授 (30126007)
|
研究分担者 |
廣澤 裕介 立命館大学, 文学部, 准教授 (20513188)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 三言 / 警世通言 / 古今小説 / 喩世明言 / 醒世恒言 / 会校会評本 |
研究概要 |
大塚は『警世通言』の現存版本のうち、東京大学東洋文化研究所倉石文庫蔵本、名古屋市立蓬左文庫蔵兼善堂本、早稲田大学図書館蔵本、天理図書館蔵衍慶堂本、佐伯市立図書館佐伯文庫旧蔵本、三桂堂本の東京都立中央図書館蔵40巻残本、東京大学東洋文化研究所双紅堂文庫蔵36巻本について、そこに収録される作品ならびに図像の配列順、本文の文字の異同、眉批の存否と文字の異同を調査し、「本文・図像、内容・巻数表示対照表」、「本文文字異同対照表」、「眉批文字異同対照表」を作成し、これらにもとづき執筆した「『警世通言』版本新考」を『埼玉大学大学院博士後期課程紀要 日本アジア研究』第9号(2012.3)に発表した。この論文の概要については、2012年3月に早稲田大学で開催された中国古典小説研究会関東例会で発表している。また2012年度に中国で開催されるいずれかの研究会でその内容を報告すべく、すでに全文の中国語への翻訳を終えている。さらに今後上海古籍出版社から刊行予定の『警世通言』会校会評本のための基礎作業として、全40篇の校点作業を終えている(この作業については完璧を期すため今後2次3次と実施してゆくことにしている)。 廣澤はすでに『古今小説』の前田尊経閣文庫蔵本、国立公文書館内閣文庫蔵本、法政大学図書館正岡子規旧蔵本についての本文、眉批の異同調査を終えており、同じ版木を使用し、書名を『喩世明言』と改めた版本のうち、北京大学図書館馬氏書蔵残本を調査し、執筆した「北京大学図書館所蔵『喩世明言』残本についてー短篇小説集印行の軌跡ー」を『学林』第53・54号(2011.12)に発表している。 李金泉はこの科研費の旅費を使って来日し、内閣文庫、蓬左文庫、天理図書館、京都大学人文科学研究所において明清の稀本白話小説の版本調査を行った。『醒世恒言』の校点作業についてはすでに終了しているという。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するには『古今小説』、『警世通言』、『醒世恒言』の現存しているすべての版本間の本文ならびに眉批の異同、存否の調査を実施し、いずれの版本が最古のものであり、いずれが最良の版本であるかを見極めなければならない(現存最古の版本が最良とは限らない)。『古今小説』と『警世通言』についてはほぼこの作業が終了している。『醒世恒言』はそもそも調査対象となる版本が少ないし、眉批のある版本は同一の版木を使った2種であるからさして問題にならない。 会校会評本を出版するには、本文ならびに眉批に句読点をつける校点作業が欠かせないが、『醒世恒言』についてはこの作業がほぼ完了しており、『警世通言』についても1回目の作業は終了していて、あとは完璧を期す作業が残っているのみである。『古今小説』はやや遅れているが、大半の作業は終了しているというから、研究計画の達成には支障がないとみなせる。
|
今後の研究の推進方策 |
大塚は『警世通言』に施した校点を再度確認し、校点作業の完璧を期すことにしている。 廣澤はやや遅れている『古今小説』の校点作業を可及的すみやかに終了させるとともに、「北京大学図書館所蔵『喩世明言』残本についてー短篇小説集印行の軌跡ー」を中国語に翻訳し、今年度中国で開催されるいずれかの学会で報告できるよう準備をする。これとともに、上海古籍出版社から出版される会校会評本のための解説を執筆することを目指す。ちなみに大塚の「『警世通言』版本新考」とこれに付された附録三点(「本文・図像、内容・巻数表示対照表」「本文文字異同対照表」「眉批文字異同対照表」)は会校会評本の解説のために書かれている。 李金泉は日本の大塚、廣澤と上海古籍出版社の連絡仲介役を引き続いて不断につとめるとともに、校点の終わった原稿を上海古籍出版社に引き渡し、『醒世恒言』の会校会評本の解説を執筆する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究は不断に進展しており、新たな資料も毎年数多く影印出版されている。これらについては必要に応じ購入し、手元に置いておく必要がある。またパソコンなどの機材も経年使用したものについては新しいものに買い替えねばならない。もちろんインク、紙、パソコンソフトについても同様である。物品費はこれらのために使用する。 大塚、廣澤の両名は、それぞれが担当する作品の現存する版本のうち目睹調査が終わっていないものにつき、国内、国外に亙って調査を継続する。また、研究成果を発表するため、中国で開催されるいずれかの学会に参加し、そこで研究成果を報告し、中国の研究者を啓発することにしている。なおまた出版社と打ち合わせのため上海にもおもむく。李金泉は補充版本調査のため来日し、東京を中心に調査を行う。旅費はこれらのために使用する。 大塚、廣澤の両名が中国で行う報告のための原稿については、翻訳またはネィティブチェックをしかるべき中国人に依頼する必要がある。謝金はこうした用途に使用する。 その他は資料のコピー、撮影、郵送、また成果の印刷などに使用することにしている。
|