研究課題/領域番号 |
23520417
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大塚 秀高 埼玉大学, 教養学部, 教授 (30126007)
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研究分担者 |
廣澤 裕介 立命館大学, 文学部, 准教授 (20513188)
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キーワード | 三言二拍 / 警世通言 / 古今小説 / 醒世恒言 / 今古奇観 / 和刻三言 / 佐伯文庫 |
研究概要 |
大塚は、分担している『警世通言』の本文の定稿化ならびに標点作業をすでに完成させ、再考、三考作業を継続して行っている。またこれと並行し、馮夢龍が編集した『古今小説』『警世通言』『醒世恒言』の三言に、凌濛初の二拍、『拍案驚奇』『二刻拍案驚奇』を加えた全百九十八篇、これから四十篇を選んだ選本『今古奇観』とを対象とし、江戸時代に京都の書肆風月堂の第五代主人風月荘左衛門こと澤田一齋が、そこから五篇内外の優れた作品を選び、岡白駒ならびに自身が施訓を担当し、自身の書肆風月堂から刊行した、いわゆる和刻三言(小説三言ともいう)、『小説精言』『小説奇言』『小説粋言』のうち、一齋が施訓を担当した『小説粋言』を対象とし、その版下作成の際に依拠した具体的な「三言二拍」ならびに『今古奇観』の版本の特定作業を進めている。この結果、風月堂が所蔵もしくは鈔本を作成した中国通俗小説と、佐伯藩旧蔵の佐伯文庫本、西本願寺の写字台文庫旧蔵でその後大谷光瑞により満鉄大連図書館に移ったいわゆる大谷本の中国通俗小説の間に密接な関係があることがわかった。今後江戸時代における漢籍の流通と所蔵に新たな光が当たることは間違いない。 分担研究者の廣澤は、分担している『古今小説』の本文定稿化ならびに標点の作業を進めつつ、明の万暦時代を中心とする蘇州における通俗小説の出版状況に関する研究を実施している。 研究協力者の李金泉は、上海にあって、担当の『醒世恒言』につき本文の定稿化ならびに標点作業を行うとともに、成果の出版を予定している上海古籍出版社との連絡作業にあたっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大塚の担当する分の当初予定していた作業は基本的にすでに終了している。 廣澤担当分については進行が遅れている。理由は廣澤が任期付の教員であり、平成24年度がその最終年度であったため、研究に打ち込める環境が整っていなかったためである。聞くところでは来年度も職は担当大学で継続するとのことであるが、担当部署も変わり、研究職ではなくなるかもしれないという。大いに気がかりであるが、この点については時間の経過と、本人の奮起を待つしかない。 なお、上海古籍出版社との李金泉を通じての出版事業の交渉については、いまだに出版契約書が送られてこず、いささか憂慮している。平成25年の可能な限り早期に上海にゆき、直接出版契約を進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
大塚は、『警世通言』の標点作業を最終的に完成させるとともに、これと並行して進めている風月堂と澤田一齋、佐伯藩旧蔵の佐伯文庫本、西本願寺の写字台文庫本をめぐる中国通俗小説の流伝と所蔵をめぐる研究を完成させる。 また「三言」の新テキスト出版以前に、研究の成果を論文にまとめ内外の学会で発表するとともに、これを大学の紀要に可及的速やかに発表する。さらにそれを中文に翻訳し、参加予定の上海で開催される国際学会の論文集や中国の学術雑誌などに投稿し、成果を公開し学会共有のものとする。 廣澤は、停滞している定稿作業を鋭意進め、完成させる。 協力者李金泉に依頼している上海古籍出版社との出版交渉については、出版契約書がいまだに送られてきておらず憂慮しているところなので、可及的すみやかに自身上海におもむき、その進展状況につき確認することにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
大塚は、四月末から五月初めに佐伯市に行き、佐伯市教育委員会、佐伯市立図書館を訪ねて佐伯文庫本につき調査をする。また八月末に上海で開催される二つの国際学会に参加し、論文を二つ提出・発表する。旅費は主にこの二件で使うが、今後新たに参加可能な学会が開催される場合は、可能な限りそれに参加する。旅費はそのために用いる。 謝金は日本語原稿の翻訳またはネイティブチェックの費用にあてる。 なお、関連する図書などが刊行された際はそれを購入することにしており、その際には物品費を用いる。
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