研究課題/領域番号 |
23520418
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 宗子 千葉大学, 教育学部, 教授 (40154108)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 比較文学 / 児童文学 / 少年少女 / 翻訳 / 教養 |
研究概要 |
1 大阪府立中央図書館国際児童文学館、神奈川近代文学館、また国際子ども図書館や国立国会図書館で資料調査および資料収集を行った。小学館の叢書を中心に、偕成社、河出書房などの叢書を主な対象とした。これらについては次年度以降さらに詳しい対比などをしつつ追究したい。また、購入した書籍をもとに、翻訳と文学、子ども読者、読書に対する意識追究を継続中である。2 2011年5月に日本比較文学会東京支部5月例会で、2011年10月に日本児童文学学会第50回研究大会において、口頭発表を行った。前者では広く比較文学研究を捉える中で、本研究のテーマがどのような意味を持つかを再確認し、後者では創元社・講談社・岩波書店の三叢書における「東洋」という括り方の特徴を、「西洋」意識の反照として位置づけた。3 上記の日本児童文学学会研究大会における発表をもとにまとめた論考を、所属学部の紀要に発表した。その要旨は以下の通り。 1950年代に創元社と講談社から刊行された二つの「地域割り」叢書について、これまで進めてきた「西洋」諸地域の翻訳作品の少年少女読者に対する提示のあり方を念頭に置いた上で、「東洋編」の諸巻の検討を行った。先行する叢書類の巻構成や最近の「東洋学」関係の論考を踏まえた上で、創元社版の「東洋」編が編者側のきわめて意欲的な構想のもとに成立していること、反面、「西洋」における当時の学術成果のもとに一元的な文化程度の判断基準が存すること、「中国」の比重が後半に高まることを指摘し、また講談社版では、創元社版と差異化が図られつつも、収録作品等で共通性が見られること、創元社版と共通する編者側の意識があることを確認した。両者の検討を通して、当時の児童文学関係者たちにとって、「日本」が「西洋」を経由したまなざしの下に、「東洋」の内でもあり外でもあるという二重性を持って自己認識されていたことが露呈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、当初予定していた程度の資料調査や資料収集を、大阪府立中央図書館国際児童文学館への出張を中心に、進めることができた。次に、研究テーマに関連する文献や、収集した資料のデータ類整理に使用するパソコンを購入するなど、必要な物品の整備をはかることができた。さらに、当初念頭にあった日本児童文学学会の研究大会のほか、日本比較文学会の東京支部例会でも発表の機会を得ることで、調査結果をもとにして論の構築を試みていくことが前進した。
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今後の研究の推進方策 |
従来の研究成果をもとにしながら、すでに収集してきた資料についてもあらたに「東洋」の観点から洗い直していく一方で、概括的調査が一段落した小学館の叢書類について特に資料整理を進めるとともに、着手した偕成社や河出書房の叢書についての資料調査を当面、進めていく。それらを通じて、「西洋」-「東洋」というまなざしの関係と児童文学における「教養」形成の実情をさらに明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査に関しては、引き続き、専門施設である大阪府立中央図書館国際児童文学館への出張を複数回予定しておきたい。また、翻訳児童文学の研究に関連する文献の収集を、ある程度まとめて行えればと考えている。
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