研究課題/領域番号 |
23520429
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長崎 広子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70362738)
|
キーワード | ヒンディー文学 / インド / バクティ |
研究概要 |
1) 本研究で調査対象となっている2人のヒンドゥー教詩人(トゥルシーダースとスールダース)と2人のイスラム教詩人(ラスカーンとラヒーム)の交流を調査するために、電子テキストからそれぞれの用いた語彙を調査した。その中でラヒームは脚韻をふむ時にペルシア語の単語を用いることはあるものの極めて限定的で、基本的にタドバヴァ語彙を使用していることが明らかになった。その一方で、彼はペルシア語でインド固有の韻律バルヴァイを4点創作しており、独創的な試みを行っている。 2) 昨年度にひきつづき、詩人の伝記を調査し、特に本年度はラヒームについて主に『アクバルの書 (Ain-i-Akbari)』によってまとめ、論文『アブドゥル・ラヒーム・カーンカーナー著『バルヴァイ詩集』―ムガル廷臣のクリシュナ讃歌-』に記した。 3) ラヒーム著バルヴァイ詩集を解説をつけて日本語に全訳し、出版した。 4) イタリア・トリノで開催されたCoffee Break ConferenceでOne Language and Two Metrical Systems: The Case of Hindi-Urduと題して、現代北インドを代表するヒンディーとウルドゥーというふたつの言語で異なる韻律の体系が用いられているが、Dohaがギリシャ語の韻律がインドで用いられるようになったのと同様の現象として位置づけられることを口頭発表した。 5)イタリアでの口頭発表をもとに、さらにくわしく四人の詩人の詩のスタイルについての分析をくわえた論文を執筆中である。 6)インドでの現地調査を行い、Vrndavan Research Instituteでラスカーンの写本を調査した。これまで発見されていない新たな詩が数点見つかり、真作かどうかの調査を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでほとんど研究されたことのないラスカーンの写本調査は困難に直面したものの、昨年度のラージャスターンでの調査と今年度のブリンダーワンでの調査によって、かなりの資料が集まり、発見されていなかった詩も数点見つかった点で順調である。 得られた成果は順次学会発表や論文によって公開している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終段階として、今回の研究課題として挙げた四人が本当に交流があったのかどうかについて、伝記と作品のスタイルから考察し、論文にまとめる。 自らの考察について独断的なものにならないように、研究会で発表しながら他の研究者から助言を仰ぐ。
|
次年度の研究費の使用計画 |
こちらから赴いて研究打ち合わせをしたり、メールで意見交換を行ったため、当初予定していた研究会を実施しなかったため。 学会出張や現地調査による使用が中心になるが、次年度は研究会を開催し、謝金等の支払いを伴う業務も行ってもらう。
|