研究実績の概要 |
最終年度のため、前年度までに集めたデータと研究成果をふまえ、バクティ文学期におけるヒンドゥー教徒詩人とイスラム教徒詩人の交流を総合的に考察し、以下のとおり口頭および論文として発表した。1)ラヒームとラスカーンとジャーエスィーという三人のイスラム教徒詩人の文体とヒンドゥー教徒詩人トゥルシーダースの文体を比較しながら、ヒンディー文学で特に好まれ発達したmora metre と syllabic metreの詩形(Doha, Caupai, Kavitt, Baravai, Savaiya)を分析し、バクティ研究会で口頭発表した。2)ヒンドゥー教詩人のトゥルシーダースとスールダースと、イスラム教詩人のラヒームとラスカーンの韻律上の相違点と共通点を分析した結果、トゥルシーダースは他の詩人が得意とする詩形を用いて自ら作品を描き、脚韻を他の詩人よりも1音節多く踏み、冒頭のリズムを4-4または3-3-2のモーラのリズムで開始することで、より洗練された文体に仕上げていることが明らかになった。この点を中心にした研究成果は、平成25年度にCoffee Break Conferenceでの口頭発表を発展させ、論文としてまとめ、海外の査読つき学術雑誌に投稿した。3)トゥルシーダースの詳細な伝記である『上人伝要解 Mul Gosain Carita』の前半部分を日本語に翻訳し、テキストの重要性と特徴を考察して論文として『印度民俗研究』に発表した。 海外での研究調査として、まずブルガリアのソフィア大学主催の中世ヒンディー文学のワークショップに参加した。また、インドで現地調査を行い、写本のコピーとトゥルシーダースの聖者伝の資料を中心に収集した。 前年度に引き続き、中世ヒンディー韻文を電子テキスト化し、専用サーバーで公開した。
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