1、『柳集』音辯本の通行本は正集43巻本であるために沈晦編45巻本とは異系統と考えられており、また音辯本に収載の陸之淵「序」の「内外集凡三十三通」によって30巻本系統との関係も想定されたが、淳祐九年劉欽序刻本の現存によって45巻本に属することが証明された。2、45巻音辯本は半葉12行、通行本は43巻13行であるが、清・民国には43巻12行本が著録されており、清代では13行本を宋刊と考える者が多かったが、民国に至って書志学の泰斗で説が分かれ、張元済は13行本を元刊、12行本を宋刊、傅増湘は前者を明刊、後者を元刊とし、今日では傅氏説に従う。3、張元済は王宗玉刊記「戊辰」を有する『韓集』朱校本を元・天暦刊本とし、傅増湘は明・洪武二一年とするが、これは木記「正統戊辰善敬堂刊」のある『柳集』との合刊にして建陽王氏善敬堂による明・正統十三年の坊刻本であり、さらに四部叢刊本『柳集』はそれ以後の逓修版の一つである。4、43巻12行本は故宮博物院に1部、北京図書館に2部と残本、上海図書館に残本が現存する。故宮蔵本は別集を缺落、それは北京蔵本の残本。その他、43巻13行本には正統十三年本と版式を異にする刊本が各地に現存する。5、傅氏説の根拠は明示されていないが、現存する諸版本を対校した結果、避諱・字様や誤字・俗字の出現と継承から統計学的に次のような先後関係となる: 宋・45巻12行>元(?)・43巻12行>元・43巻13行>明・43巻13行 四庫全書本はこの中で明刊13行本系統を底本としているが、文津閣本は誤字・乱丁・欠落が最も多い。6、43巻13行本は国家珍貴古籍名録の第4次(2013)までに多くの蔵本がリスト入りしているが、より古い43巻12行本は1部に止まる。これに限らず名録の審定には疑問が多い。7、『黄氏日抄』・『永楽大典』所拠の『柳集』はいずれも30巻本ではなく、音辯本に属する。
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