研究課題/領域番号 |
23520437
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中里見 敬 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30250963)
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研究分担者 |
李 麗君 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (70389568)
中尾 友香梨 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (10441734)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 濱文庫 / 浜文庫 / 唱本 / 目録 / 説唱文芸 / 民間文学 |
研究概要 |
本研究では、濱文庫所蔵唱本の詳細な冊子体目録を作成しながら、将来的に電子目録を公開できるよう、フォーマットに則りデータ等を蓄積している。その成果は紙媒体以外に、九州大学学術情報リポジトリでも公開し、学内外へ広く発信している。 今年度は「濱文庫所蔵唱本目録稿(三)」を『九州大学附属図書館研究開発室年報』2010/2011に、「濱文庫所蔵唱本目録稿(四)」を『言語科学』第47号にそれぞれ掲載した。前者に掲載した第六帙27冊は蘇州、第七帙23冊は西安の刊刻であり、後者に掲載した第八帙13冊は西安刊本、第九帙38冊のbang子腔は北京刊本、第十帙36冊は洛陽の刊本・石印本である。北京以外の唱本は、東京大学東洋文化研究所の雙紅堂文庫(長澤規矩也旧蔵)、および早稲田大学図書館の風陵文庫(澤田瑞穂旧蔵)にも所蔵のない珍しいものである。 また、濱文庫所蔵唱本から2篇を選んで訳注を作成した。『美女五更思春』は男女の逢い引きを唱ったもので、儒教的な「大伝統」(Great Tradition)に縛られない民衆のもう一つの伝統が生き生きと描かれている。『改良文明棍新編』は20世紀初頭の西洋化・近代化の時流を風刺するもので、社会風俗史的にも興味深い。 2011年10月8~9日、九州大学箱崎キャンパスで開かれた日本中国学会第63回大会では、附属図書館の協力のもと「濱文庫展示会」を開催し、138名の学会会員の来場者があった。また「九州大学附属図書館濱文庫について:その特色と整理の現状」と題する学会発表を行って濱文庫資料の学術的な価値を紹介するとともに、濱文庫所蔵唱本目録の作成についても現状を報告した。 昨年度、濱文庫所蔵の濱一衛先生の遺稿を整理して刊行した『中国の戯劇・京劇選:濱一衛著訳集』(花書院, 2011)は、幸いにも2011年3月の初版に続いて、同年6月に改訂第二版を出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では濱文庫所蔵の唱本全18帙について目録を作成することを目指している。初年度において第10帙までの目録稿を作成することができたのは、当初の計画以上の進展だと考えている。 中国と日本の戯曲専門家である戚世雋・土屋育子両先生の協力を得て、唱本2篇の訳注を作成することができたことは、当初の計画になかった成果であり、両先生に深く感謝したい。日本中国学会での口頭発表「九州大学附属図書館濱文庫について:その特色と整理の現状」で、濱文庫資料の学術的な意義を紹介するだけでなく、本研究による唱本目録の作成についても学界に広く知ってもらう機会となった。濱文庫所蔵の濱一衛先生の遺稿を整理して刊行した『中国の戯劇・京劇選:濱一衛著訳集』(花書院, 2011)が専門家による書評を得て、改訂第二版を出すことができたこととあわせて、濱文庫の中国演劇史研究における価値が再認識されることに、本研究が多少なりとも貢献できたのではないかと思う。 以上の理由により、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、濱文庫所蔵の唱本について詳細な目録データを蓄積し、順次「目録稿」として刊行・公開する。これまでの木版本に加えて、今後は石印本や鉛印本が多くなるので、他大学の目録を参照しながら、その著録の基準や方法について検討を進める必要がある。本研究の最終年には、全体の目録を一書として刊行する予定である。 また、国内外の唱本所蔵機関で資料調査を行い、濱文庫所蔵本との版本の異同を確認するとともに、他機関での保存状況を調査する予定である。その結果は、九州大学附属図書館における濱文庫の保存状況の改善にいかしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料調査に携帯できるノートパソコンを1台購入する。国内外の唱本所蔵機関で資料調査を行うための旅費を計上する。関連分野の研究図書、およびデータ蓄積用のパソコン関係の備品および消耗品を購入する。
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