研究課題/領域番号 |
23520442
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
藏中 しのぶ 大東文化大学, 外国語学部, 教授 (40215041)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 中国・スウェーデン・イタリア / 長安 / 玄奘 / 鑑真 / 和名類聚抄 / 弁色立成 / 顔氏家訓 / 祗園精舎 |
研究概要 |
《仏教東流》の東アジア文学史を、大安寺創建説話の《兜率天宮→天竺・祇園精舎→唐・長安西明寺→平城京大安寺》の系譜を軸に、奈良平安朝文学の出典体系の継承の具体的な展開の様相を跡づけた。 第一に、大安寺創建説話の歴史的・文献的背景を解明するために、「知的体系の継承関係論」として、隋唐代と奈良平安朝の文献にみえる《仏教東流》《祇園精舎》関係記事の本文研究・出典考証により、祗園精舎のスダッタ長者の伝記表現と藤原氏の伝との関係をあきらかにした。中国の浙江省・浙江工商大学での国際シンポジウムに参加、西安・西北大学での国際シンポジウムに参加、長安寺院の現地踏査と研究協議を行った。 第二に、「人的ネットワーク論」として、新たに『和名類聚抄』所引の奈良時代の白話体漢和辞書『弁色立成』『漢語抄』『楊氏漢語抄』の俗語に注目、唐代俗語が古辞書に採録された理由として、律令学・仏教学・文学の講説の場を想定し、律令官人の学問の場が、奈良時代の長安西明寺から大安寺文化圏、さらには平安朝にいたる出典体系の継承に大きな役割を果たしていることを論じた。 平成23年9月1日~平成23年9月7日(7日間)中国・西安・西北大学において「和漢比較文学会西北大学特別例会」に参加、西北大学主催国際シンポジウム「長安と日中文化交流」で講演、唐と日本の文化交流を専門とする西北大学の王国維教授(考古学)、高兵兵准教授(日中比較文学)との研究協議により、《仏教東流》の要となる最新の長安の寺院の発掘調査報告をはじめ多大な教示を得た。玄奘関連文献、鑑真伝三部作に名前がみえる長安の寺院の実地踏査は有益であり、特に、興教寺の玄奘三蔵の墓塔を確認しえたのは、大きな成果である。「大安寺文化圏」の源流である長安の重要性、「仏教東流」の唐代の歴史観の解明の必要性を感じ、非常に有益な中国の人脈を形成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の課題は、順調に進展しつつある。 特記すべきは、大安寺文化圏の出典体系の継承が、『顔氏家訓』『和名類聚抄』の引用書目にも確認されたことである。これによって、『和名類聚抄』引用書目のうち、仏教関係文献、奈良時代の唐代口語辞書『弁色立成』『漢語抄』『楊氏漢語抄』佚文について、体系的な調査をおこない、新たな視座として《律令官人の学問の質と場》という観点を意識しつつ研究を推進する。「律令・仏教・文学の交錯ー唐代口語語彙「顔面」をめぐる講説の場ー」(『日本文学』5月号)を発表してその展望を示し、その内容を中国・華中師範大学で講演をおこなった。 7月、中国・浙江工商大学において「東アジアの漢籍遺産」に参加、研究発表をおこない、『アジア遊学』平成24年6月号に「東アジアの漢籍におけるスダッタ長者」を発表予定。平成23年9月1日~平成23年9月7日(7日間)中国・西安・西北大学において「和漢比較文学会西北大学特別例会」に参加、9月1日西北大学主催国際シンポジウム「長安と日中文化交流」で講演し、さらに長安寺院の実地踏査を行ったことは、予想外の大きな成果であった。 また、研究協力者として、イタリア語翻訳をお願いしているマリア・キアラ・ミリオーレ教授と、エストニア・タリンのEAJSで研究協議を行い、さらに、イタリアの日本研究者と交流を深めることができた。EAJSではノルウェー・オスロ大学のオースタッド・安倍玲子教授から『ナラ・リポート』共同研究の申し出があった。今年度の海外研修の研究計画を具体的に策定することができ、さらに大きな展望をもたらす基盤となるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
5月11~21日、中国・中山大学で研究発表、広州工業大学、華中師範大学、魯東大学で講演。6月30日、美夫君志会招待研究発表。7月1~8日、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学国際シンポジウムで研究発表、クリスティーナ・ラフィン教授を軸とする俗語の共同研究ワークショップに参加。9月より短期海外研修。9月、ノルウェー・オスロ大学で、オースタッド安倍玲子教授と『ナラ・リポート』共同研究。10~11月、イタリア国立サレント大学で、マリア・キアラ・ミリオーレ教授と『大唐伝戒師僧名記大和上鑑真伝』『唐大和上東征伝』『延暦僧録』イタリア語翻訳と『顔氏家訓』の共同研究。11月~1月、フランス国立高等学院で、シャルロッテ・フォン・ヴェアシュア教授と「唐代の仏教と文学」共同研究、敦煌文書を中心に資料収集。
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次年度の研究費の使用計画 |
短期海外研修をとることになったので、国内にいる4~8月は、5月の中国での講演、7月のカナダでの国際シンポジウムでの研究発表の旅費に充当する。9月以降は、ヨーロッパでの移動のための旅費に充当する。特に、11月~1月、フランス国立校当学院滞在中は、敦煌文書を中心とした資料調査と資料収集のための機器備品、コピー代などに充当する。
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