研究課題/領域番号 |
23520446
|
研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
牛 承彪 関西外国語大学, 国際言語学部, 准教授 (20460842)
|
キーワード | トン族歌謡 / 大歌 / 民間文学 / 歌師 / 歌垣 / トン族文化 / トン族民俗 / フィールドワーク |
研究概要 |
24年度の研究計画にしたがって研究調査を進め、以下の面において成果を収めることができた。 (1)トン族地域の歌師が歌をどのように習得し、歌師として若い世代にどのように伝授したかについて、明らかにすることができた。前年度の岩洞寨の4人に加え、今年度は新しい調査地黄崗寨の2名の歌師について聞き取り調査を行った。岩洞寨とは異なる特色を見せている。(2)トン族の村社会において、歌師がどのような役割を担い、歌謡文化の伝承がどのように行われたか、実際に行われた行事についての考察、行事における歌師の役割についての観察から、その全体像が見えるようになった。また、黄崗寨は道路建設・伝統文化の活用など、まさに開発が進んでいる最中の段階で、伝統文化と観光開発による文化の再創造が錯綜している。時代の流れの中で歌謡文化はどのように変遷しているかがはっきりとみることができた。(3)トン族歌謡文化の背景として、今年度は調査地の二つの村で6人の長老の聞き取りを行った。村の歴史・生業(稲作と機織り)・信仰・村同士の訪問習俗などをめぐるものであるが、その中の厄祓い行事・葬式について現場調査(観察)を行うことができた。これらは本研究の重要な部分であり、トン族村の「文化誌」を構成するものである。(4)調査地の岩洞寨の五名の歌師が覚えている歌(大歌)を録音し、文字整理・中国語訳作業を行った。文字数としては、118,648字にのぼる。歌謡資料としての価値が期待できるだけでなく、トン族文化遺産の記録・保存においても重要な意味を持つ。 上にあげたような調査・研究は、これまでは行われていない。資料としての価値、また研究成果も期待できると思う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)調査地の年中行事が行われる時期に合わせて現地調査を行ったため、現場観察から得たものが多い。(2)数十年活躍してきた歌師や長老から直接話を聞くことができたので、すべてが内実のあるインタビューになっている。(2)素質のいい協力者の協力を得ており、調査内容の文字整理と翻訳の質が保証されている。
|
今後の研究の推進方策 |
一年目、二年目の調査は、主として伝統文化がよく伝承されている村に重点を置き、質と量両面において予想した以上の研究成果を収めた。今年は最後の年度であるので、以下のように研究調査をすすめたい。 (1)トン族地域全体の状況を把握するため、近隣の湖南省と広西チワン族自治区におけるトン族地域の実地調査を行う。(2)補足調査として貴州省黎平県岩洞寨・黄崗・銀朝の実地調査を行う。(3)これまでの歌師についての聞き取り調査、行事現場調査の成果をまとめ、歌謡資料の整理と翻訳を進める。(4)研究成果報告書を作成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
25年度は研究計画通りに研究費を使うことにする。現地調査の旅費、文字整理・翻訳の謝金のほか、研究成果報告書の作成に費用がかかるので、必要以上の出費を抑え、研究費を有効に使用する。
|