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2012 年度 実施状況報告書

元曲・崑曲の歌唱及び韻律の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520451
研究機関長崎純心大学

研究代表者

石井 望  長崎純心大学, 人文学部, 准教授 (50341558)

キーワード尺八 / 笛 / 字音 / 音韻
研究概要

笛のCTスキャン撮影を行なった。笛所藏者は蘇州崑劇院の元首席笛師・顧再欣氏である。顧氏は亡父の用笛など西洋化以前の稀少な崑曲笛三管を攜帶して來日し、石井が福島ハイテクプラザの東芝製マイクロスキャナーで撮影した。また壓縮空氣による自動吹奏機を用ゐて音響を測定した。
撮影と測定の意義は主に三つ。第一に西洋化以前の崑曲笛は今や滅びつつあるため、その形状を精密に保存すれば將來3Dプリンターなどで復元できる。第二に撮影の經驗を活用し、將來正倉院尺八の撮影に進むための準備とする。第三に西洋化以前の崑曲笛は平均指孔であるが、その配列數値は十六世紀の黄佐著「南雍志」に既に見えるもので、孔位比率は現存の西洋化以前の崑曲笛と一致する。音階としては單純に下二孔をシ・ファの音に充當して曖昧に轉調し易くするもので、唐人二十八調(=正倉院尺八)の曖昧音階を更に曖昧にしたものだと考證できる。東洋音階史の全體像を描き出すために必要なのが本研究の測定である。
年度末には東京藝術大學「第十囘日中音樂比較研究國際學術會議」にて「正倉院尺八の名稱及び形制の源を論ず・論正倉院尺八名稱及形制之源」と題して口頭發表を行なった。論じた内容は、第一に「龠・笛」二字の古音はともにdiakで一致すること、龠が漢以前に忘れられたため、西域の胡笛が傳來した際に「笛」が新たに造字されたこと。第二に正倉院尺八及び室町以後の和尺八はともに吹孔を外から斜めに切った形状であるため、和尺八の起源は正倉院だとの謬説が流布してゐる。しかし後漢から唐末五代までの史料では外から切る形状は普遍的であり、同じ音樂文化圏の産物に過ぎず、和尺八が正倉院から來たとは言へないこと。第三に林謙三は正倉院の孔制が晉の荀勗に由來するとしたが、荀勗笛は儒家の三分損益音階であり、正倉院と一致しない。隋唐俗樂音階は龜茲起源の大印度文明圏的特色であり、儒家起源ではないこと。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

崑曲の音階を研究するために笛のCTスキャンを相當程度まで進めることができた。今年度も別の稀少な笛を繼續撮影すれば崑曲音階を議論するための基礎データとして有効なものとなるであらう。
また音階についての議論も一部分を口頭發表(配布論文あり)することができたので、今年度のうちに論文を修正・補足した上で、できるだけ大きな國際的論文集に投稿するための準備がほぼできた。

今後の研究の推進方策

今年度も23年度及び24年度につづいて撮影・測定を行なふ。24年度と25年度の測定結果を併せて純心科研論文集第二集として刊行する。崑曲音階を議論するための基礎データとして有効なものとなるであらう。
平成23年度に笛のCTスキャン撮影を行なった結果のデータをまとめて、「純心科研論文集」として刊行したが(http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB10399654)、その配布郵送作業は現在進行中であるため、早めに完了させる。
東京藝術大學「第十囘日中音樂比較研究國際學術會議」にて「正倉院尺八の名稱及び形制の源を論ず・論正倉院尺八名稱及形制之源」(配布預稿集あり)と題して口頭發表した内容を、今年度のうちに修正・補足した上で、できるだけ大きな國際的論文集に投稿する。正倉院尺八音階はそのまま唐人俗樂音階であるから、崑曲の音階の前史とも言ふべきものである。その研究結果にもとづき、更に崑曲の音階の眞相を明らかにするため考察を進める。

次年度の研究費の使用計画

臺灣などから笛の專門家を招聘し、CTスキャン撮影を行なふ。
蘇州等に出張して古樂譜・古韻書を蒐集する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 正倉院尺八の名稱及び形制の源を論ず・論正倉院尺八名稱及形制之源2013

    • 著者名/発表者名
      いしゐのぞむ(筆名石海青)
    • 学会等名
      第十囘日中音樂比較研究國際學術會議
    • 発表場所
      東京藝術大學
    • 年月日
      20130327-20130327

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公開日: 2014-07-24  

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