研究課題/領域番号 |
23520454
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
西山 國雄 茨城大学, 人文学部, 教授 (70302320)
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キーワード | 文法化 / 機能範疇 / ラマホロト語 / 一致現象 / 統語論 / 形態論 / 接辞 / 指示詞 |
研究概要 |
本研究の2つの柱は、日本語とラマホロト語における文法化現象の分析と、類型論の文献を基にした通言語的視点からの文法化の考察である。具体的には①日本語の連体形(準体言)と形式名詞の発展、②日本語複合動詞における後項の文法化、③ラマホロト語における接辞が一致形態素へ発展した過程を扱う。 ①については、昨年度くろしお出版より発表した内容と国語研究所で発表した内容を、国際学会で発表した。そこでは連体形が古語の段階で既に範疇に曖昧(CPまたはDP)で、準体助詞の「の」はその曖昧性を引き継いだのであって、「の」自体が文法化を経たのではない、という説を出した。そして範疇の曖昧性は、2つの機能範疇の融合によるという説を、フィリピン諸語の指示詞の証拠に基づき提案した。これは機能範疇の出現方法としては第4の方法で、他の3つとどう関係づけるかは、考察を継続中である。 ②は東北大の小川芳樹教授との共同研究であるが、昨年11月にここ数年の成果を開拓社より出版した。そこでは後項が機能範疇化し、助動詞になったり、目的語を認可できなくなる現象を扱った。 ③では、東インドネシアのスラウェシ島に見られる第二位置接辞からラマホロト語の一致形態素が文法化により発達したと仮定した。この変化がオーストロネシア語族の中での変化(内的要因)によるのか、パプア言語との接触によるのか(外的要因)ということが問題となるが、研究代表者は昨年6月に本学で行われた日本言語学会の公開シンポジウムの企画、司会を務め、言語地域をテーマとして取り上げた。個人発表では、一致形態素の発達には内的要因と外的要因共に関わっていると考えられる理由を述べた。特に外的要因の場合は、言語接触が機能範疇の出現に果たす役割というものに注目する必要を示唆しており、これがこれからの研究のテーマとなってくる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したような成果を国際学会や全国レベルのシンポジウムで発表できた。やや扱う現象が広がりすぎている懸念はあるが、それぞれのテーマでは機能範疇の出現方法で補完的な役目を担っているので、有機的につながっていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度になる平成26年度は、これまでの成果を統合することになる。これまで提案されている3つの機能範疇の出現方法を、文字通りに「統合」することは、第4の方法を検証している現在、困難な状況だが、これら4つどんな関係にあり、どれとどれが変種とになされるのかなどの考察をしていく。その際、言語変化の内的要因と外的要因の関係も重要になり、言語接触などの視点も取り入れていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1書籍購入の量が当初の見込みよりも少なくなったため。 1書籍購入で使う予定
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