本研究のキーワードは文法化と機能範疇だが、24年度の研究活動では、これまでの成果をまとめ、更に発展させた。 まず前年に国際学会で発表した内容を論文にして提出した(刊行予定)。ここでは連体形の範疇の曖昧性(CPまたはDP)は、2つの機能範疇の融合によるという説を展開したが、これは機能範疇の出現方法としてはこれまで提案されていない方法である。 また、ラマホロト語の一致形態素が第二位置接辞から文法化により発達したという仮説に関連して、今年度は新たな現象に注目した。ラマホロト語の所有名詞句と助動詞である。ラマホロト語では所有者は主要部名詞の前に来るが、これは他の地域のオーストロネシア言語とは逆の順序であり、パプア言語のそれと一致する。また助動詞が動詞句の後に来るが、これもパプア言語のそれと一致し、他の地域のオーストロネシア言語では見られない。これらの変化がオーストロネシア語族の中での変化(内的要因)によるのか、パプア言語との接触によるのか(外的要因)ということが問題となるが、これを理論的に解明する構想がまとまり、25年度から科学研究費受託することが決定した新しい研究「言語接触による統語変化の理論的研究」につながった。 学会や講演での口頭発表は4件あり、ラマホロト語の所有名詞句と助動詞の問題の萌芽的知見を発表した。また日本語における接辞中止について、機能範疇の観点から研究を行い、発表した。この研究は論文を執筆中だが、これも機能範疇の役割の知見を深めると期待される。
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