研究課題/領域番号 |
23520458
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
R・A Martin 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (30302342)
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キーワード | 理論言語学 / 生成文法の極小理論 / 連鎖 / コントロール構文 / 国際研究者交流 / 米国:ドイツ |
研究概要 |
マーティン: 研究プロジェクトの二年度目にあたり、初年度に蓄積した研究成果を基に積極的に国内外の国際学会・講演に参加し意見交換・資料収集に務め、研究課題について幅広く知見を広げ格段に発展させた。特に本学において本研究課題に関する国際ワークショップを2回開催し1回目の6月には海外研究者である吉田方哉助氏(ノースウェスタン大学)、John Whitman氏(コーネル大学)、高橋真彦氏 (メリーランド大学) を招聘した。各発表とも、統語論における最先端の知見に満ち非常に秀でた内容であり本研究プロジェクトの進展に大きく貢献した。続く7月にはドイツからUli Sauerland氏(ZAS Berlin) と八代和子氏 (ZAS Berlin)、米国から須藤靖直氏(MIT)を招聘し、日本から長谷川信子氏(神田外国語大学)に研究発表を依頼した。各発表とも補文構造の視点から本研究課題について扱い、海外から招聘された三者が意味論の基盤に基づき、発表を行ったのに対し、長谷川氏の発表は日本語の現象を統語論の観点から日本語の言語事象を分析した。各発表とも非常に優れた洞察を含んでおり、本研究プロジェクトに幅広く貢献するものであった。又、海外共同研究者であるJuan Uriagereka氏と本科研プロジェクトで進めるために3月中旬からメリーランド大学を訪問して1週間に渡る打ち合わせを行い、共同研究の内容を詳細に精査した上で議論を交わし共同研究を精力的に推し進め、科研プロジェクトを大幅に深化させた。結果、大いに研究成果が実った年となり、最終年度に向けて十二分な研究基盤を構築できた。 連携研究者の藤井は 精力的に日本語のコントロール構文の分析を進め名詞節など様々な構文を観察し日本語に類するコントロール構文の形成について一定の示唆を与えた。又、国内にて精力的に発表を行い、論文を掲載し、研究成果を公開している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は本研究プロジェクトの二年目にあたり、平成22年度に終了した連鎖形成と解釈を主題とした科研プロジェクト及び初年度の研究成果を基盤にし、研究内容を発展している。本年度は研究プロジェクトの内容を深化させることに重点を置き、特に本研究プロジェクトの核を成すUriagereka教授 (University of Maryland/海外共同研究者) との共同研究を最終年度に完成させるためにも、同教授との共同研究に焦点を当て、精力的に研究を行った。1週間の間、マーティンがUniversity of Marylandに訪問した際に、連日研究の打ち合わせを行ったことにより、多岐にわたり非常に顕著な進展を見せ、多大な成果を上げている。この共同研究の成果は本研究プロジェクトの集大成と言えるものであり、国際的な出版社に投稿して、本として出刊する予定である。更に、共同研究を含めた本研究プロジェクトの研究内容は、国際的な出版社から今後出版予定である本の一部として、前向きに検討されており、今現在、2本の論文を提出し、査読に掛けられている。 加えて、上述したように、国際ワークショップを二回開催したことにより、本プロジェクトに対し統語論だけではなく意味論から新たな知見を得られ、本研究プロジェクトの内容が多角的な側面で検討することが可能になった。又、他の発表も非常に見識豊かなものであり、幅広い観点から論じられた上に、世界的に最先端を行く研究者と手広い内容で議論を行うことができ、研究内容が多大な進展を見せた。結果として、本研究プロジェクトの研究を発展させるのに非常に有意義なものであった。 本研究プロジェクトが目的とする連鎖形成と解釈の研究基盤に大いに還元できるものであり、本研究プロジェクトの発展に大いに寄与した。以上から、本年度は計画以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究プロジェクトの個々の研究細目に力を入れて研究題目も幅広く扱い、この二年に得た知見を上乗せして、研究を更に深化させる。マーティンは引き続き、Uriagereka氏と連携を密にして、共同研究を推し進める。特に、連鎖の本質と解釈について、今まで得た知見を基に、研究目的にある個々の題目の分析を行い、最終的な成果を出す。二年間で得られた研究成果を、wh移動など非項移動を中心に全域適用移動や連続循環移動など一定領域を超えて連鎖が形成される言語事象について引き続き研究し、分析の汎用性を検証する。又、広範囲にわたる様々な言語から、連鎖と類似した依存関係が見られる諸事象のデータを集めることで、本研究プロジェクトの成果である連鎖・及び連鎖解釈のメカニズムの研究を発展させて分析を行う。その上で、本研究プロジェクトで広範に昇華させた研究成果と連鎖に類似した依存関係を扱っている様々な他分析と比較し、本研究プロジェクトの研究成果として昇華させる。 藤井は様々な構造における種類のコントロール構文の分析とともに日本語・中国語・英語の付加詞のwh移動を引き続き調査して、比較統語研究を行う。この研究はマーティンが行っている共同研究と相互に作用しあい、wh移動や連続循環移動が形成する連鎖について、重大な示唆をもたらすことが期待される。 国際シンポジウムを行い、海外から第一線で活躍する研究者を招聘し、国内からも関連する研究を行っている研究者の発表を組み入れる。又、国内外の学会において、本プロジェクトで得られた発見を公表し、本プロジェクトの成果を含め、積極的に議論を交わして、知見を蓄積させ、研究の内容を更に深化させる。ウェブなどにこれらの成果を論文として掲載する。Uriagereka氏との共同研究は出版する予定である。このように公表することによって様々な研究者から多大な意見が得られ、更なる研究の進展が期待できる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に海外からAngel Gallego氏(バルセロナ自治大学)を招き主体とした国際ワークショップを開催する予定であったがGallego氏の都合により日本に来ることが不可能となり、昨年度の開催の見通しがつかなくなり次年度に延期になった。結果として、約14万円が剰余金になり、次年度に使用することになる。この剰余金により、次年度に開催予定である国際ワークショップの招待講演者を海外から更に1名招待することが可能になった。 上述のように、世界でも最先端の研究内容を吸収して、更に本研究プロジェクトの内容を大幅に深化させるために、海外から第一線で活躍する研究者数名と国内で高度の専門的知見を有した研究者数名を招待し、本研究課題に基づいた国際シンポジウムを開催する予定である。計画では、上述のGallego氏に加え、共同研究者であるUriagereka氏を招聘する他に、状況に応じて海外から最先端の知見を有している研究者を呼ぶ予定である。以上の講演者に専門的知識の提供の代価として謝金を用いる。他にも以下の二つを計画している。まず、海外共同研究者であるメリーランド大学のUriagereka氏との共同研究を進めるために、Uriagereka氏を上記国際シンポジウムに招待して、共同研究の打ち合わせを行う予定である。加えて、共同研究の論文執筆及び本研究プロジェクトの研究内容について最終調整を行うためにMaryland大学に数日間訪問する。そして、本研究プロジェクトの成果を幅広く公表し、多岐にわたる研究者の専門的知見を得るために、国内外で発表する予定である。又、最新の研究知見を得るために、新刊・近刊を中心に理論言語学の蔵書を購入するために物品費を用いる。その他にも、国際ワークショップを開催するので、印刷代及び諸費用を財源から当てる計画である。
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