本研究プロジェクトは、ミニマリストプログラムの観点から、連鎖解釈メカニズムを対象とし、自然文法に存在する連鎖及び寄生空所など類似依存関係の解明を目的とした。とりわけ、海外共同研究者のUriagereka教授との共同研究を中心に研究プロジェクトを進めた。研究の結果、インターフェース条件を順守するのに、統語構造に語彙要素が複数個所に表出することが必須の場合があり、語彙要素が的確に解釈されるために、連鎖が必要とされる。この場合、統語計算で語彙要素の複製が複数個所に生じ、語彙要素の複製を一つの連鎖として統合することにより、語彙要素の統語部門及びインターフェースの適切な解釈が保証される。本分析は、本来移動の結果として認識された連鎖形成がコントロール構文・寄生空所などの依存を伴わない類似依存関係にも適用され、幅広い汎用力を有する。本研究プロジェクトでは、この連鎖現象が「融解」を始め、量子力学と数多くの性質を共有することを示した。 又、複数の国際シンポジウム等を通し、研究を発展させた。特に、25年度には、Angel Gallego氏 (バルセロナ自治大学) とWolfram Hinzen氏 (ICREA研究所・バルセロナ大学) を迎え、平成26年3月4日に国際ワークショップを開催した。又、Uriagereka教授と研究の打ち合わせを行うために、メリーランド大学を訪問し、連日、プロジェクトの主題である連鎖構成のメカニズムを端緒にして、幅広い言語事象について深く議論を行い、科研プロジェクトの各研究項目において、大幅な進展が見られ、最終報告として体裁が整い、次の研究題目につなげることができた。更に、本の出版に向け、最終的な確認も行った。研究成果は国際学会及び論文において、幅広く公表されている。 連携研究者の藤井は、日本語の観点から、コントロール構文の形成を中心に、本研究プロジェクトに多大な示唆を与えた。
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