研究課題/領域番号 |
23520464
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
町田 章 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (40435285)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 認知言語学 / 認知文法 / 受動文 / ミスコミュニケーション |
研究実績の概要 |
本年度は,前年度に引き続き事態内視点の図式化の研究を進めるとともに,図式化の意義について考察した。具体的には,英語の受動形態素には,動詞と統合して主語構文に現れるものと話題化構文統合するものがあることを提案した論文「英語属性叙述受動文の合成構造」(『日本認知言語学会論文集』第14巻, 768-773)が刊行された。これにより,従来,他動性や行為連鎖の観点からは説明できなかった属性叙述受動文に対しても認知文法の枠組みから説明することを可能にした。 また,日本語の被害受身の被害解釈はなぜ生じるのかという問題を扱った論文「コントロールサイクルと被害性-被害受身の概念構造」(『言葉のしんそう(深層・真相)-大庭幸男教授退職記念論文集-』,英宝社,東京,461-473)も刊行された。この論考では,他動性や行為連鎖に基づく受影性ではなく,有情者行為者同士のコントロールサイクルの観点から被害性の発生を論じた。 これに加え,言語と情報研究プロジェクト研究会(広島大学)において,「図式と認知文法-「ている」の分析を通して-」と題した口頭発表を行なった。この発表では,日本語の「ている」が単なるアスペクト標識ではないことを指摘し,「て」と「いる」の認知図式を合成することにより,様々な現象が説明できると提案した。 また,認知言語学の言語観を広く一般の読者に紹介した「ことばの意味と認知」(『ミスコミュニケーション-言語学徒 英語学徒が語る』丸善出版, 東京, 17-50)も刊行された。この中では,いかに認知的な要因が言語現象に関わっているかを平易なことばで紹介することに勤めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,論文3編を刊行することができた。しかも,これに加えて重要な進展があった。これまで本研究で主張している事態把握の様式(事態内視点と事態外視点)は主に受身文や移動構文の説明に用いられてきたが,「ている」というアスペクトに関する現象の説明にもその有効性が認められることが示せた(「図式と認知文法-「ている」の分析を通して-」言語と情報研究プロジェクト研究会)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で事態把握の様式を「事態内視点」「事態外視点」というように「視点」の問題として扱ってきたが,この問題は「視点」以上の様々な問題を含んでいることが明らかとなってきた。今後は,認知主体と環境との相互作用や話し手・聞き手の相互作用の問題をどのように図式に組み込んで行くかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,業務上の都合で参加を予定していた国際学会CSDL(San Diego)に参加できなかったため予算の執行が予定よりも少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,国際学会や国内学会にできるだけ参加し,研究発表を行う予定である。
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