研究課題
本研究の目的は、自発発話におけるポーズ挿入とそれに伴う発話の調節の実態を解明し、その背後にある規則を明らかにすることである。具体的には、日本語話者による自発発話を音響分析し、読み上げ発話と対比させながら、ポーズ挿入に伴うセグメント長の変化などの発話調節の実態を明らかにし、その上で、現存の音声生成理論に照らしてポーズ産生規則を解明することを目標とする。本研究における自発発話の発話条件では、与えられた図形を文章に組み立てながら音に置き換えるという作業を行うため、話者は、(何を話すかという)発話計画を、逐次変更・調整しながら発話を進めていく必要がある。この、計画の変更・調整を、個々の話者が発話に組み込んでいく実態について、話者共通に使われる方法と話者固有の方法のそれぞれの特徴を明らかにすることが、本研究の目的である。「説明」という発話状況を設定したのは、喜怒哀楽などの感情的起伏をできるだけ抑え、発話計画という認知的負荷以外の要因をできるだけ排除した状態で、読み上げ発話との比較ができるようにするためである。昨年度は、読み上げ発話と自発発話を時間構造(分節長、ポーズ長、発話速度など)の面から分析したが、今年度は、ピッチ(声の周波数の幅や、周波数の特徴的な変化の様子)の面に着目して分析を行った。その結果、自発発話における話者共通の特徴的傾向として、句末の助詞や文末での周波数の上昇が観察された。周波数の上昇は分節の伸張を伴い、相俟って、強調(聴覚的には「確認しながら発話している」という印象)の効果をもたらすものであった。周波数の幅については、自発的な発話の方が(読み上げに比べて)広くなる話者と狭くなる話者の両方がみられた。いずれの場合も、周波数の上限値はどの話者も比較的一定で、変化しやすいのは下限値の方であった。
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Proceedings of the 2nd Annual International Conference on Language, Literature & Linguistics
巻: Vol.1 ページ: 103-106
10.5176/2251-3566¬_L313.65
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