研究課題/領域番号 |
23520472
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
福盛 貴弘 大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (00407644)
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キーワード | トルコ語 / プロソディ― / 音声 / トルコ諸語 / トルクメン語 / アクセント / イントネーション / 音響音声学 |
研究概要 |
「トルコ語のなぞなぞの構造分析」(『一般言語学論叢』第15号)を刊行した。トルコ語のなぞなぞという韻文における特徴を析出したものである。本稿では、アクセントやイントネーションにおける基本周波数、ポーズにおける無音区間の持続時間長といった音響音声学で計測できる要因だけでなく、母音調和、音節数、音節構造、形態素構造、韻といったプロソディックな要因もふまえて、トルコ語のなぞなぞの構造を示した。 前年度に「トルコ語のなぞなぞの音声分析」(『一般言語学論叢』第14号掲載)において、なぞなぞの節構造として、韻律節があることを提示した。トルコ語のなぞなぞにおける韻律節は大中小(急上昇調とポーズがある、あるいは自然下降調であるところが大韻律節末、ポーズはなく急上昇調のみがあるところが中韻律節末、語声調の終わりが小韻律節末)に分けることができる。この韻律節も先に示した複数の要因によって構成されており、韻律節構成に多様なプロソディックな要因が関与していることも明らかになった。 トルコ語の韻律分析は、音節数や韻からなされることはこれまでにもあったが、音声学的特徴の全体像から捉えようとする試みはこれまでになかった。本稿によって、全体構造を示すための記述法が提案され、限られた用例ではあるがその記述法は有効に適用できることが示されている。こういった構造分析を示すことができた点で、これまで「豊かな音声変化」と漠然と呼ばれていた現状に対し、分析的な結果を示すことができた点に意義がある。 トルクメン語においては、前年度に日本初の『トルクメン語入門』を刊行した。この基礎データをもとに、ネイティブの録音を撮りつづけてきた。その音響音声学的分析は、次年度から公開できる予定である。トルクメン語の音声分析は、世界的にも希少な研究であり、一刻も早く公開できるよう分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トルコ語のなぞなぞ分析は、おおむね順調に進んでいる。 トルクメン語の分析は、代表者が病(脳炎により意識不明となる)に倒れたため、その分遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
トルコ語のアクセント論をしっかり固めるつもりである。これまで全体像を規則的にとらえられてこなかった言語なので、より詳しく考察していく予定である。 トルクメン語については、単語集およびテキストの録音を増やしていき、音響音声学的分析に耐えられる質量をそろえることが喫緊の課題である。 これらのことによって、トルコ語で検証したことがトルクメン語でどのように実現しているかを検証でき、トルコ諸語オグズ語群における規則、制約が見出せると思われる。 また、『トルクメン語入門』は、トルクメニスタンでキリル文字からラテン文字に文字改訂が行なわれたので、ラテン文字版を刊行できるように再度テキストを見直す必要がある。キリル文字とラテン文字による発音の違いがあるか否かも検証課題となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は資料収集および録音時の謝礼、公刊のための原稿料が主な必要経費となる。 また、データ入力を手伝ってもらう人への謝金も必要である。 1人でやるとミスが出やすいので、複数人のチェックをしてもらうために必要となる
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