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2011 年度 実施状況報告書

機能範疇の働きと(ミクロ)パラメターに関する日韓対照研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520476
研究機関南山大学

研究代表者

青柳 宏  南山大学, 人文学部, 教授 (60212388)

研究分担者 高野 祐二  金城学院大学, 文学部, 教授 (40286604)
杉崎 鉱司  三重大学, 人文学部, 准教授 (60362331)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード(ミクロ)パラメター
研究概要

青柳は、日韓語との比較のために中国語も視野に入れ、複合達成動詞が日中語では生産的であり、韓国語でそうでないのは、日本語が派生の早い段階(または形態部門)の併合によって、中国語が統語部門の動詞移動によって、それぞれ複合動詞形成を許すのに対して、韓国語はそのいずれも許さないからだとの見通しを得た。さらに、韓国語の使役と受動で曖昧なボイス・マーカーは日本語のサセ・ラレに直接該当するのではなく、むしろ日本語の共通語根から派生する自他有対動詞にみられる他動詞化素、自動詞化素と似た存在ではないかとの仮説の検討を開始した。 高野は、日韓語における移動の特性を比較検討する上で、まず、日本語の非対格構文と分裂文を中心に研究を行い、それぞれ新たな特性を発見した。多重分裂文の特性については、「多重分裂文における複数の焦点要素は同節要素でなければならない」という一般化の観点からさらに詳しく調査した結果、例外が数多く存在すること、また、その例外にも規則性があることを明らかにした。この成果は、日本語多重分裂文の分析に重要な示唆を与えると考えられ、現在その派生にかかわる移動の特性を検討中である。 杉崎は、理論研究において機能範疇が重要な役割を果たすと考えられている日本語の現象のうち、(a)格助詞 (b)項削除 (c)アル/イルの交替の3つを取り上げ、その獲得過程の解明に取り組んだ。まず、(a)格助詞については、CHILDESに収められた日本語発話コーパスを分析し、幼児が獲得最初期から格助詞と後置詞を区別しているか否かを分析した。(b)項削除については、実験調査によりwh句を削除することはできないという制約を4歳児が知識として持つか否かを明らかにした。(c)アル/イルの交替については、CHILDESに収められた日本語発話コーパスの分析を開始するとともに、幼児1名の自然発話の定期的なビデオ録画を開始した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

日韓語のボイスとアスペクトの比較を担当する青柳は、両言語との比較対象に適した中国語のボイス・アスペクトの検討を行い、研究協力者(張楠)とともにその成果を日本言語学会第143回大会(於大阪大学豊中キャンパス)で発表した。 日韓語の移動現象の比較を担当する高野は、特に日本語の移動について新たな特性を発見し、それを日本英語学会第4回春季フォーラム招待講演(於静岡大学浜松キャンパス)などで発表した。 日韓語の言語獲得の比較を担当する杉崎は、CHILDESコーパスを利用して日本語の格助詞と後置詞の区別の獲得を検討し、the 36th Boston University Conference on Language Development(於米国マサチューセッツ州ボストン大学)などで発表した。当初予定していたよりも研究対象となる現象を拡大しており、加えて、日本人幼児1名の自然発話の定期的ビデオ録画を開始している。 以上のように、研究代表者および研究分担者2名がそれぞれのテーマについて学会発表および論文の形で研究成果の(中間)報告を行い、また将来の研究のための準備をすでに始めているため、本チームによる研究はおおむね順調に進展していると思われる。

今後の研究の推進方策

青柳は、中国語とも比較検討しつつ、日韓語の使役・受動マーカーと自・他動詞化素の統語的、形態的関係、およびボイス交替と語彙的アスペクトの関連について研究を進める。日韓語の他動詞化素・自動詞化素の比較検討に加えて、「押し倒す/*押し倒れる」のように日本語の複合動詞では「他動性調和」が観察されるのに対して、中国語では「推倒(押し倒す)」の「倒」のように後項は自動詞でなければならず、さらに韓国語では「押し、倒す」(または「押して倒す」)のように複合動詞というより動詞の連用接続で表現しなければならないのかを検討する。 高野は、日本語に関して得られた知見をもとに、韓国語およびトルコ語における移動の特性を検討し、日本語との比較研究を行う。なかでも、多重分裂文における複数の焦点要素にかかるとされる「同節要素条件」がこれらの言語でも観察されるかどうかを検討する。 杉崎は、上記「概要」で触れたビデオ録画によるデータ収集を進めるとともに、幼児を対象とした実験の準備に取り掛かる。また、韓国人幼児の発話コーパスの分析にも着手する。特に、日韓語の存在文や所有文がどの時期に獲得されるのか、また格助詞と後置詞の区別の獲得がどのように進むのかを詳細に検討する予定である。 以上の研究を遂行するために、三者は国内外の学会で研究成果を発表し、国内外の研究者との意見交換を行う。

次年度の研究費の使用計画

研究代表者および分担者は、いずれも研究成果を発表し他研究者と意見交換をするために国内外の学会に参加する予定があるので、旅費が発生する。また、図書およびその他資料を渉猟、分析し、整理するために備品、用品、消耗品を購入する必要がある。さらに、国内外から専門家を招聘し専門的知識の提供を受けるため、謝金および人件費が必要となる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 中国語複合動詞の分類再考-語彙的アスペクトの観点から-2011

    • 著者名/発表者名
      青柳宏、張楠
    • 雑誌名

      日本言語学会第143回大会予稿集

      巻: 143 ページ: 346-351

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Double Complement Unaccusatives in Japanese: Puzzles and Implications2011

    • 著者名/発表者名
      Takano, Yuji
    • 雑誌名

      Journal of East Asian Linguistics

      巻: 20 ページ: 229-254

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Children’s Grammatical Conservatism: Evidence from the Acquisition of Case Markers and Postpositions in Japanese2011

    • 著者名/発表者名
      Sugisaki, Koji
    • 雑誌名

      The Proceedings of the Twelfth Tokyo Conference on Psycholinguistics

      巻: 12 ページ: 249-260

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Distinction between Case Markers and Postpositions in Early Child Japanese: New Evidence for Children’s Grammatical Conservatism2011

    • 著者名/発表者名
      Sugisaki, Koji
    • 雑誌名

      BUCLD

      巻: 35 ページ: not pagenated

    • URL

      http://www.bu.edu/bucld/proceedings/supplement/

    • 査読あり
  • [学会発表] Movement Effects in Binding2011

    • 著者名/発表者名
      Takano, Yuji
    • 学会等名
      日本英語学会第4回国際春期フォーラム(招待講演)
    • 発表場所
      静岡大学
    • 年月日
      2011年4月24日
  • [学会発表] A Constraint on Argument Ellipsis in Child Japanese2011

    • 著者名/発表者名
      Sugisaki, Koji
    • 学会等名
      The 36th Boston University Conference on Language Development
    • 発表場所
      Boston University
    • 年月日
      2011年11月4日
  • [学会発表] 中国語複合動詞の分類再考ー語彙的アスペクトの観点からー2011

    • 著者名/発表者名
      青柳宏、張楠
    • 学会等名
      日本言語学会第143回大会
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2011年11月26日

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公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-09-04  

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