研究課題/領域番号 |
23520478
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
崎田 智子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (10329956)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 認知言語学 / 対話統語論 / 認知語用論 / 伝達 / 対話 / 発話構築 / 談話 / スタンス |
研究実績の概要 |
本研究は、談話と認知を統合して言語運用を研究する認知語用論のアプローチにより、伝達言語の発話構築メカニズムと認知的背景を解明するものである。 本年度は、言語学において指摘されてきた様々なシフトにスタンスが深く関わっていることを、発話者と目的物との関係性に基づくスタンス理論(Du Bois 2007)により研究し、発話者の自己の位置づけの観点から談話や対話上のシフトを探究した。特に会話における語りに注目し、footing、ナラティブレベル、ナラティブ構造、主観的・客観的事態把握、トピック推移、意図、前発話者との分岐、事態への関与のそれぞれのシフトが、スタンスにおける自己の位置づけと深く関わることを調べ、これらのシフトにおいて談話標識がスタンス標識として対人関係的機能を果たしていることを明らかにした。談話標識に関しては、対話における機能と語りにおける機能とが乖離しているとの指摘がなされてきたが、スタンスを基盤にすることで両者を統一的視点で捉えることが可能であることを示した。また、語りにおけるスタンス関係とその推移をstance triangleを用いて図式化し、スタンス標識がスタンス関係を調整するプロセスを示した。さらに、従来対話を中心としてきた談話統語論(Du Bois 2001)の枠組みを拡張し、モノグラフ的語りの詳細をダイアグラフに表示することで、語り手や語り内の各発話者の言語的特徴やスタンス推移を響鳴と差異の観点から分析することを試み、さらに混在するスタンスをレベル化して精査することを提起した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対話統語論と認知言語学の視点を統合して日常言語における伝達に関わる言語事象が対話の中で創発、構築されるプロセスとそれを可能にする認知的背景とを解明するため、ミネソタ大学言語学部及び認知科学研究所より協力を得ながら研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、引き続き認知語用論のアプローチにより伝達言語の発話構築メカニズムと認知的背景を解明するという目的にそって、自然な日常言語データの収集・分析及び検証を進めて行く予定である。 これまで対話の相互作用からモノロジックな性質を併せ持つ語りにまでスコープを拡張しながら響鳴とスタンス関係を基盤にして発話構築メカニズムを分析してきたが、今後さらに様々な要素による意識の重層化に対応して正確にスタンスのレベル化を捉える必要がある。また、幅広く個々のケースに対応するスタンスの図式化を行う。加えて、言い間違いや自己修正の生起例の分析を進め、隣接する発話を超える長い情報の継続の中での発話構築メカニズムの解明を目指していく。 なお、来年度は研究最終年度にあたるので、本研究に関連する国内外の研究者から意見やフィードバック、分析結果のレビュー等を得ながら研究成果をとりまとめ、発表を行う予定である。このため、談話情報、ナラティブ、認知言語学、エスノメソドロジー等の文献や資料を確認し、相互行為としての談話と認知のインターフェースを様々な角度から再検証しておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はフィールドワーク及びデータ分析に関連して多大な研究協力を得ることができたため、施設や機器等に関わる支出が抑えられ、又、物品及び謝金の支出も間接経費内で抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度となるため、データ補完分析及び取りまとめや成果発表のための経費を含めて支出する予定である。
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