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2012 年度 実施状況報告書

有無・量的大小・増減・出現消滅の述語の総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520479
研究機関同志社女子大学

研究代表者

服部 匡  同志社女子大学, その他部局等, 教授 (40228490)

キーワードコーパス / 尺度性 / 名詞 / 量的形容詞 / 極性反義語 / 共起関係 / コロケーション
研究概要

平成23年度に引き続き、尺度性を持った属性を表す名詞と属性の大小を表す形容詞類との共起関係について、共時的・通時的観点から分析を行った。本年度は、特に量的形容詞の反義関係に着目した用例分布の分析を行った。その結果知り得た重要な事実は次のとおりである。
反義語間での共起用例数の比較を単純に行った場合、「濃い-薄い」を除く多くの語では、名詞との共起は、大値語の方に偏っていることが分かった。ただし形容対による相違があり、「強い-弱い」などで特に偏りが大きい。これらのことは、国会会議録・新聞記事という性質の異なるコーパスで見られる傾向なので、反義語対の意味的性質を反映したものと考えられる。
名詞に対する、当該形容詞の用例数総計における大値語-小値語の共起割合と大きく異なった共起割合を示す反義語対を検出した結果、「大きい-小さい」では特異的に大値語との共起の多い名詞が多いこと、「多い-少ない」「濃い-薄い」ではその反対の傾向の名詞が多いことが分かった。特に「濃い-薄い」の特異性が顕著である。
通時的に見て「多い」の意味領域が縮小した可能性を前年度までに見いだしたが、さらにそれを裏付ける事実が得られた。
有無を表す述語、および、増減を表す述語に関して、尺度性を持つ名詞類の共起についての分析の基礎となる数量的データを作成した。
有無の述語については、名詞別用例頻度の分析の結果からは、「長い-短い」などの形容詞に比較的近い分布を示すことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の目的のうち、1.尺度的な側面を有する名詞と、その値の大小を表す述語として用いられる量的形容詞類および増減の動詞との結合傾向に関する共起用例のデータ作成に関しては、ほぼ実現できた。2.共起用例データを数量的な方法を用いて分析し、どのような意味特徴を持った名詞がどのような形容詞類とよく結合するのかを明らかにすることについては、大小の述語と名詞の共起に関しては、分析結果を論文として公刊した。増減の述語と名詞の共起に関しては、24年度にある程度の見通しを得たので、本年度に分析を進め論文としてまとめる。3.諸名詞類が、有無・多寡・出現消滅の述語のうちどれとよく共起するか、また、プラス(有・多・出現)とマイナス(無・少・消滅)のどちらの述語とよく共起するかのパターンの分析について。多寡の述語に関しては分析結果を論文として公刊し、有無の述語に関してもハとガの選択を含めた調査を行い一定の知見を得た。4.一般的な名詞句を主語とする有無(存在/不存在)の述語と多寡の述語の平行性に特に注目し、コーパスの用例から得られる事実を参照して、それらを有する文に関する包括的な統語論・意味論の枠組みを提案すること、および、5.以上を踏まえ、当該述語類と名詞類のそれぞれを総合的な観点から特徴付け、諸事実に対する説明を与えることについては、ある程度の準備と考察は行っているが、論文化は本年度の課題である。なお当初は考えていなかったが、データから形容詞「多い」の意味領域の通時変化の可能性に気づき、その理由の考察を行っている。

今後の研究の推進方策

平成24年度までに蓄積したデータに基づき、まだ十分な分析を終えていない増減や有無の述語を中心に分析を進め、総合的な観点からの考察を行う。最終年度として研究成果を国際的な学会で発表し、成果報告書を公刊する。
具体的には、1.増減の述語を、大小述語に対応した尺度次元によって分類し、それぞれとの共起パターンによって名詞をグループ化する。それらについて、大小の述語の場合との関係を考察する。2.有無・多寡の述語の共通点や相違に関して、ガとハの選択を含めた名詞別共起用例数の分析に基づいた考察を行う。3.以上を踏まえ、総合的な観点から、当該述語類と名詞類のそれぞれを特徴付け、これまでに知られた諸事実に対する説明を与える。
当初は予定していなかったが、「多い」の通時的意味変化の可能性について、複数のコーパスの調査に基づいた考察を進める。また、抽象的属性の大きさを表すのに「高い」が用いられることが増加してきた傾向について、英語での対応事実の調査をも行い、その理由の考察を進める。

次年度の研究費の使用計画

The 21st International Conference on Historical Linguisticsでの発表が内定しており、そのため海外出張旅費を約450,000円使用する。また、研究成果報告書の出版のため約100,000円を使用する。また、コーパスを利用した最新の研究動向、とりわけ、英語圏での研究動向を把握し、研究のまとめに反映させるため、図書を約50,000円購入する。他に、資料整理・報告書発送のためのアルバイト謝礼が必要である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 反義関係に基づいた尺度的形容詞と名詞の共起傾向の分析―国会会議録のデータから2013

    • 著者名/発表者名
      服部匡
    • 雑誌名

      同志社女子大学総合文化研究所紀要

      巻: 28 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 名詞と尺度的形容詞類の共起傾向の推移(2)―国会会議録のデータから―2012

    • 著者名/発表者名
      服部 匡
    • 雑誌名

      同志社女子大学学術研究年報

      巻: 63 ページ: 47-72

    • 査読あり
  • [学会発表] From Quantity to Height: Diachronic Change in the Preferences of Basic Scalar Adjectives for Nouns Denoting a Gradable Property in Japanese2013

    • 著者名/発表者名
      Tadasu Hattori
    • 学会等名
      The 21st International Conference on Historical Linguistics
    • 発表場所
      University of Oslo (Norway)
    • 年月日
      20130801-20130805
  • [学会発表] 極性反義語の用例分布とその解釈2012

    • 著者名/発表者名
      服部 匡
    • 学会等名
      第2回コーパス日本語学ワークショップ
    • 発表場所
      国立国語研究所 (東京)
    • 年月日
      20120906-20120907
  • [備考] 同志社女子大学研究者データベース

    • URL

      http://research-db.dwc.doshisha.ac.jp/rd/html/japanese/index.html

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公開日: 2014-07-24  

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