研究概要 |
本研究課題の目的は、日米大学の連携によるコンパラブルコーパス(ストーリーテリング)の構築とその分析結果の外国語教育(英語・日本語)における活用方法の検討であった。 コーパスの構築については、日米の英語教育(EFL)・日本語教育(JFL)環境の連携により、英語母語話者コーパス (ENS)、英語学習者コーパス (EL)、日本語母語話者コーパス(JNS)、日本語学習者コーパス(JL)の4つのサブコーパスの計で401テキストを収集することができた。 分析においては、談話レベルの言語現象である照応関係に焦点を当て照応表現の種類・連続性を観察するため、照応表現と談話の一貫性との関係に着目したセンタリング理論(Centering Theory, Grosz et al. 1995)によるモデル化を試みたが、センタリングルールに基づく半自動分析システム Centering Analyzerを初年度に開発したことで、分析の効率化を図ることができた。前述の構築コーパスのうち、同条件、同内容で収集された ENS-JL 38テキスト、JNS-EL 62テキストを同システムで分析し、そのコンパラビリティを活用した分析結果の検討を行った。 分析集計結果から、言語別特徴および学習者傾向の抽出を試み、そこから得られる教育的示唆をまとめるとともに、英語教育、日本語教育、コーパス分析、談話研究に関連する国内外の学会で発表を行った。 また、研究発表の過程で、同様のスト-リーテリングコーパス(話し言葉)を有する共同研究者よりデータの提供を受けることができ、談話(書き言葉)と対話(話し言葉)のコンパラビリティ―という側面を今後の研究課題に加えることができそうである。また、センタリング分析結果については、当研究組織以外の研究者とも共有することで、当課題とは別の視点での研究へも拡大しつつある。これらの成果を土台にさらに発展させる道すじが形成できたと考えている。
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