研究課題/領域番号 |
23520482
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研究機関 | 石川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小熊 猛 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60311015)
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研究分担者 |
田村 幸誠 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (30397517)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 主観性 / V-framed 言語 / S-framed 言語 / 場面内視点 / 脱主体化 |
研究概要 |
接触行為を被る有情者が目的語で言語化され、接触が生じる身体部位が前置詞句で表される英語構文(身体部位所有者上昇構文)について、コーパスを用いた検証調査および先行研究を踏まえた予備的な日本語との対照分析を行った。コーパス等からデータ収集したものの中には、接触を被る身体部位が入れ子式になった stabbed him through the ribs into his liverのような例が確認できた。2つめの前置詞句において身体部位が定冠詞ではなく所有格代名詞を伴っている点は、この構文において身体部位が定冠詞を伴うメカニズムを明らかにする手がかりとなる可能性がある。日本語には身体部位所有者上昇構文に対応する表現がないとされる。しかし、身体部位および被害を被る有情者の両者がプロファイルされるという点では、「被害受け身文」と「逆行構文」が機能的対応構文表現と言える。被害受け身構文では接触を被る有情者がハ/ガ格(主語)で、身体部位はヲ格で現れる、逆行構文では、明示的に言語化されていない接触を被る参与者が、構文の意味構造によって肯定文では「話し手」、疑問文では「聞き手」と同定されるといった具合である。被害受け身文および逆行構文は、「場面内視点(直示性)」と関わる構文として分析される。英語の身体部位所有者上昇構文において接触行為を被る有情者が対格ばかりでなく与格でマークされていたとする通時的先行研究は、この英語の構文も「場面内視点」(視点の移入)と関わる構文として分析される可能性を示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日英の接触動詞の生じる構文を中心に主観性の観点から理論的分析を進めていると同時に、24年度の研究に向けてその他の言語における接触動詞の現れる構文についての予備的考察に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者のフィールドワーク調査の結果、および研究協力者のコーパスを用いた調査の結果を集約し、調査対象とする言語内の接触動詞構文ネットワークの分析を進め、接触動詞の生じる事態の言語化のバリエ―ションを分類し、調査対象言語を比較対照し分類を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
・研究関連図書購入・分担研究者のフィールドワークの旅費(アラスカ)・研究代表および研究協力者の国際学会での共同研究発表旅費(カナダ)・研究代表所属機関での研究打ち合わせ旅費(札幌―宮崎)・研究代表の国際学会での研究成果発表(英国)
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