研究課題/領域番号 |
23520482
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
小熊 猛 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60311015)
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研究分担者 |
田村 幸誠 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (30397517)
井筒 美津子 藤女子大学, 文学部, 准教授 (00438334)
川畠 嘉美 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (70581172)
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キーワード | 参照点構造 / 逆行構文 / 事態把握 / 直示性 / 動詞枠付け言語 / 衛星枠付け言語 |
研究概要 |
英語には客観的に事態を描写する接触動詞構文(S+接触動詞+所有格代名詞+ 身体部位)と接触行為が及んだ被参与者に注目する身体部位所有者上昇構文(S+接触動詞+被行為者+the 身体部位)が存在する。日本語には事態を客観的に描く前者に対応する表現しかなく、身体部位所有者上昇構文に直接対応する表現がないとされる。これまでに接触を被る有情者がハ/ガ格(主語)で、身体部位がヲ格でそれぞれ現れる「被害受け身文」(Sハ 身体部位ヲ Vされる)が後者の機能的対応構文表現であると指摘されている。本研究ではこの被害受け身文に加えて、「逆行構文」(Sガ 身体部位ヲ Vしてくる)もまた機能的対応構文に位置づけられるとして分析する。この構文は接触を被る有情者が項(主語あるいは目的語)として現れないという点で身体部位所有者上昇構文、被害受け身文とは決定的に異なる。しかし、当該の参与者が構文によってプロファイルされ,肯定文では「話し手」、疑問文では「聞き手」として同定されることから、機能的対応構文と分析することが妥当であると考えられる。 被害受け身文が被行為者(経験者)主語構文である一方で、逆行構文は英語の身体部位所有者上昇構文と同様に行為者主語構文である。このことは被害受け身文よりもむしろ逆行構文の反映する事態把握が英語の身体部位所有者上昇構文の反映する事態把握により近い可能性を示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視点の移入(cf. 直示性)という観点から英語、日本語の接触動詞にかかわる構文表現と英語の接触動詞構文を対照分析することで、機能的対応構文のネットワーク関係が措定できた。また、接触動詞構文を手がかりにV-framed vs.S-framedとの相関を探る中で、その他の構文表現(使役移動構文、結果構文、受益構文)との関わる可能性が明らかになりつつある。具体的一例としては、日本語、韓国語、アイヌ語のデータをもとに「被害・迷惑」、「恩恵・受益」を表す表現に関して、V-framed vs.S-framedと相関を示す分析を行い、今後に繋がる研究成果があがっている。
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今後の研究の推進方策 |
V-framed 言語と分類される言語においても、一部の接触動詞については身体部位所有者上昇構文と見なせるものが確認される。動詞の他動性との関連からフランス語およびロシア語の事例の分析を進める。 また、英語の身体部位所有者上昇構文に生じる前置詞の意味構造に関して、とりわけ「経路」を表すacross, through などの事例を中心に「主体化」(subjectification)とい観点から考察を進める。V-framed言語であるスペイン語におけるS-framed 言語パターン表現に関する先行研究を踏まえ、構文内での前置詞の意味構造を明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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