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2011 年度 実施状況報告書

ゲルマン語における文法範疇の発展パターンと個別性

研究課題

研究課題/領域番号 23520487
研究機関東北大学

研究代表者

嶋崎 啓  東北大学, 文学研究科, 准教授 (60400206)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードドイツ語 / ゲルマン語 / 言語学
研究概要

ゲルマン語の中でドイツ語は、先進的な英語と保守的なアイスランド語と比較すると、その中間に位置し、その発展度は中程度であると見なされているが、動詞の文法範疇の発達という観点で完了形の発達度を比較すると、最も先進的なのはアイスランド語で、最も保守的なのは英語であり、ドイツ語はその間にあることが分かった。英語が先進的、アイスランド語が保守的であると一般に言われるのは、名詞の性と格の表示が英語においては消失し、アイスランド語においてはよく保たれているためであるが、そのような名詞の領域における先進性と保守性は完了形におけるそれとはまったく逆の様相を呈している。完了形の発達はクレオールや周辺的な言語においてよく見られ、従って、歴史的に大きな変化を被った言語ほど完了形が発達するという説があるが、歴史的に大きく変化しながら完了形がそれほど発達していない英語と、古い形を保ちながら完了形をよく発達させたアイスランド語を見ると、その従来の説は妥当ではないと考えられる。特にアイスランド語が古いゲルマン語の姿をよくとどめているという定説は完了形を基準にすると正しくない。現在のところ名詞の性・格における保守性と完了形の発達の関連は不明瞭であるが、完了形の発達と受動態の発達の間には相関関係があると想定されるので、動詞の領域には名詞の領域とは異なる独自の発達があり、名詞の領域における保守性がその言語の保守性を意味するわけではないことは明らかである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

言語の保守性という点でドイツ語がゲルマン語の中で中間的な位置を占めるという点では特に新しい知見は得られなかったが、名詞の領域と動詞の領域に分けて考えると、通常言語の保守性の基準が名詞の領域のみに置かれ、動詞の領域が考慮されていないということは新しい知見であると考えられる。

今後の研究の推進方策

今回の研究結果に鑑みて、名詞の性・格における保守性および先進性と完了形の発達の関連を考察する。具体的には、多言語の翻訳が刊行され比較対照しやすい言語資料であるSaint-Exupery, Le petit princeの英訳、独訳、アイスランド語訳を用いて仏語の複合過去、半過去、単純過去等がそれぞれの翻訳においてどのような時制に置き換えられているかを調査し、統計的な数値化を目指す。また可能であれば受動態など完了形以外の文法範疇の比較対照を行い、名詞と動詞の領域における発達度の相関関係の有無を考察する。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額と合わせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 西・北・東ゲルマン語の諸相2011

    • 著者名/発表者名
      嶋崎啓
    • 雑誌名

      日本独文学会研究叢書081ゲルマン祖語から現代ドイツ語へ

      巻: 081 ページ: 1-19

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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