研究課題
上代語資料である続日本紀宣命、万葉集の統語コーパス作成のため、原文の電子化、また、統語情報(主語、目的語、動詞活用など)のタグ付けをオックスフォード大学日本語研究科所属の海外協力研究者、大学院生との共同作業で行った。本年度は上代日本語の主語を表す格助詞と目的語を表す格助詞がそれぞれ、類型的に「示差的格表示」(differential case marking)と呼ばれる機能を担っていることを、統語コーパスを試験的に使って実証研究を行った。示差的格表示を持つ言語では、主語や目的語が形態的に2つのクラスに分類される。一般に一方は形態格により、もう一方は無助詞により表示され、それぞれが意味的・統語的に異なる振る舞いをする。上代日本語には主語や目的語が格助詞で表示されない、無表示主語が多くある。いままでの国語学の分野では、無表示主語は単なる格助詞が文体的に削除されただけであると考えられ、あまり、研究の対象とされてこなかった。しかし、本研究の仮説は無助詞主語・目的語は単なる格助詞が削除された文体的なものではなく、格助詞が無表示である主語・目的語であり意味的・統語的に重要な機能をもつという仮説を提示した。さらに、上代語の和歌だけでなく、散文資料である、祝詞や宣命の資料を調査し、和歌の弱点である韻律の制限が文法に影響するかなどを調査中である。本年度の研究成果は2013年、ノルウエーのオスロで行う国際歴史言語学会でオックスフォードの共同研究者と発表を行う予定になっている。また、The Handbook of Old Japanese (Mouton出版)に論文を寄稿することが決定している。
3: やや遅れている
続日本紀宣命の文法タグ付けの共同研究作業は学生を雇用しているため、学生の時間的制約などがあり、当初の予定より遅れている。
上代日本語の統語コーパス作業をオックスフォード大学との共同研究作業として引き続き行う。今年度5月に国内でのシンポジウム、8月にはオスロで行う国際歴史言語学会でのコーパスを使った研究発表が決定している。
オックスフォード大学と共同で、続日本紀宣命の統語コーパス作成のため大学院生を雇用し、統語タグを入力してもらう作業を行ってきた。当初計画していたより、進捗状況が遅れ、次年度に作業を繰り越して引き続き作業を行ってもらう。
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Japanese/Korean Linguistics, CSLI Publications, Stanford
巻: Vol. 21 ページ: 20
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