本研究は、印欧語における非人称受動表現を、特にそれが発達しているドイツ語とラテン語を中心に、適宜サンスクリット語と古代ギリシャ語を参照しつつ比較考察し、その本質的構造と展開諸形態を明らかにすることを目的とした。3年にわたる研究の結果、次の諸成果を得た。 1)ドイツ語史における非人称受動表現の分析から、伝統的な文法記述の枠組みの変革そのものが課題となり、さらには日独言語文化交流にも重大な影響を及ぼす問題であること事を明らかにした。特に今日重要性が認識されつつあるが、言語学的研究の遅れている、日本のポップカルチャーのヨーロッパへの翻訳受容を緻密に言語学的に分析する新たなプロジェクト構想へと研究が発展した。このテーマに関して研究協力者の大学院生の論文など既に多くの成果が上がっており、今後適宜発表していく予定である。 2)ドイツ語史の記述や、中高ドイツ語・ラテン語・サンスクリット語の文法記述について新たな枠組みの着を得たため、とりあえずサンスクリット語文法の概要について成果報告書をまとめた。本研究の成果を踏まえた新たなドイツ語史やラテン文法の記述を成果報告書にまとめることは予算的に不可能だったので、別途発表する予定である。 3)歴史言語学の理論問題に重要な解明が得られたため、本研究プロジェクトの一部として日本歴史言語学会の創立に参画し、さらには第2回大会を千葉大学で開催し、内外の優秀な研究者と交流を図った。 4)歴史言語学の理論問題における成果を、とりあえず言語コミュニケーション論の基礎と文化史の概要という観点で総括し、成果報告書をまとめた。
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