研究課題/領域番号 |
23520497
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
藤縄 康弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60253291)
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研究分担者 |
今泉 志奈子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90324839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 言語学 / 語彙意味論 / 日本語 / 英語 / ドイツ語 |
研究概要 |
本研究課題は,日本語(基本語順SOV,対格・与格の区別あり,主語の表示義務なし),英語(基本語順SVO,対格・与格の区別なし,主語の表示義務あり),ドイツ語(基本語順SOV,対格・与格の区別あり,主語の表示義務あり)という相互に部分的に共通する形態・統語論的性質を備えた3つの言語の研究において従来,個別言語研究の枠内でばらばらに取り上げられてきた諸構文のうちから,「ヴァレンス拡大」という観点で相互に比較可能なものを洗い出し,その背後にある意味論的基盤,および言語ごとに異なる形態・統語論的実現のメカニズムを探ることを目的としている。具体的には日本語の統語的使役構文,間接受動構文,二重主語構文,英語の使役構文(使役動詞:make, let, have, get, cause),およびドイツ語のlassen使役構文,bekommen受動構文,「自由な」与格構文等を対象とする。研究初年度にあたる平成23年度は,まず9月,これまで研究代表者・藤縄と研究分担者・今泉が共同で行ってきた予備調査による成果の要点を今泉が連合王国のLAGBにて報告した。その後10月,この発表のフィードバック成果について,藤縄と今泉が面会して意見交換を行い,当初の想定を超える発展の可能性があることを確認した。その上で両者は予備調査で扱わなかったヴァレンス拡大現象(ドイツ語のbekommen受動構文,英語のhave使役構文)を中心にデータの収集と整理にあたり,藤縄はその成果の一部を東京外国語大学国際日本研究センターや同大学語学研究所の研究会において発表した。さらに藤縄は,両者の集めたデータの一元管理を行うためのデータベースを構築する作業を開始するとともに,関係する図書の整備も推し進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度ながらすでに,研究代表者・研究分担者のいずれもが,公けの場で研究成果を発表することができた。とりわけ研究分担者・今泉による連合王国での発表は非常に反響が大きく,本研究課題の潜在的可能性について大きな手応えが確かめられただけでなく,当初想定した以上の連携の広がりに期待が持てるものであった。この結果を受け,今後の研究の進め方にも発展的な変更が加えられることとなった。また,図書や資料の整備についても,データベースの構築作業に予定どおり取りかかることができた。確かに,当初の予定で年度末に計画していたワークショップは実現できなかったものの,これは上述のような好ましい展開を受けての見直しであり,決して研究の遅れを意味するものではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も,年度の比較的早い段階で藤縄と今泉が面会し,それまでの互いの研究進捗状況について意見交換を行った上で,データの収集・整理と図書の整備を前年度同様に推進していく。その際,諸構文の変異に関するパラメータ化についてどのような方向で理論づけることが可能か,その時点までのデータを参照しながら案を練り,年度後半からはこの案をさらにデータ面で検証していく。また年度後半にはワークショップも行う。前年度開催できなかった分を補うだけでなく,新たな展開の可能性も視野に入れながら,語彙意味論の研究を現に行っている,または語彙意味論に造詣の深い研究者だけでなく,他分野の研究者もゲストスピーカーとして招待し,踏み込んだ内容の議論が行えるようにする。このような成果に基づき,最終年度は成果発表を国内外で,個人または共同で積極的に行う。また平行して単著または共著の論文を執筆し,学術誌に投稿することを目指すとともに,研究期間終了後も見据え,長期的には成果を語彙意味論や個別言語学,対照言語学の入門書執筆に結実させる作業を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では,初年度の研究成果の公表と今後の共同プロジェクト展開のための打ち合わせを兼ねて,新潟大学でのワークショップを予定していた。しかし9月に,研究分担者・今泉が,連合王国にて開催されたLAGBにて研究発表を行ったところ,予想を上回る多数のフィードバックを得られたことから,当初は予測していなかったような,研究プロジェクトの展開が見込まれるようになった。その結果,計画そのものを再考し,より充実した共同研究の実現のため,打ち合わせと準備期間を延長し,予定されていたワークショップを来年度に延期することとした。このため,新潟での打ち合わせとワークショップ開催のために計上していた旅費,ならびに,ワークショップの準備,実施の際に必要となる物品購入のために計上していた予算の執行を次年度に繰り越すこととした。そのほかは,当初の計画に沿った執行を行う予定である。
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