日本語(基本語順SOV,対格・与格の区別あり,主語の表示義務なし),英語(基本語順SVO,対格・与格の区別なし,主語の表示義務あり),ドイツ語(基本語順SOV,対格・与格の区別あり,主語の表示義務あり)という相互に部分的に共通する形態・統語論的性質を備えた3つの言語の研究において,従来,個別言語研究の枠内でばらばらに取り上げられてきた諸構文のうちから,「ヴァレンス拡大」という観点で相互に比較可能なものを洗い出し,その背後に「イベントの所有」という意味論的基盤が認められること,および言語による実現形式の異なりが,主として一致形態論やアスペクトに依存することを明らかにした。
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