米国ハワイ州ヒロ市にて期間中計6回の調査を行い、日系2世と3世あわせて16名から発話データを収集した。既に採取していたデータも含め文字化作業を行い、コード切替えに関し分析を行った。 分析では、日系2世、3世、帰米2世(ハワイで生まれた後日本で教育を受けハワイに帰国した2世)別に分析を行い、世代による差異を考察した。その結果、帰米2世がもっとも日本語を話す割合が高く、英語からの借用語が少ないという特徴が見られた。2世と3世は方言的特徴が見られ、接続詞や応答詞など機能語の借用語が多いという共通点が観察された。また、「日系人と日本人との間の会話」と「日系人同士の会話」の間の違いについて分析を行った。その結果、「日系人と日本人との間の会話」は日本語文の割合が高く、英語、ハワイ語、ハワイクレオール英語からの借用語が少なかった。さらに発話データの特徴をハワイで刊行されていた日本語新聞のデータと比較する分析も行い、ハワイにおける日本語の特徴を多角的に分析した。 最終年度は文字化した発話資料の一部を冊子にまとめて印刷した。日系人による発話資料は、言語的資料としてのみではなく、移民生活を知る貴重な資料でもある。そこで、資料のうち移民の生活が描写されている談話(8名分)をとりあげ、冊子としてまとめた。また、日系人が使用する日本語語彙に注目し、分析も行った。 研究成果は、「ハワイ日系二世の言語切替えに関するケーススタディ」(2013『東アジア日本語教育・日本文化研究』第15号に収録)、「ハワイ日系人の日本語」(2013『オセアニアの言語的世界』渓水社に収録)、「ハワイにおける日本語語彙の共通語化」(2014『東京学芸大学紀要総合教育科学系II』第65集に収録)、報告書『ハワイ日系人によるコード切替えに関する研究 ハワイ日系人の発話資料』にて発表した。
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