大規模な言語データにおいて観察される言語現象を人間の動的な言語使用の痕跡とみなす立場に立ち、言語使用と言語構造の関係の解明に向けて、日本語とフランス語の形容詞に関わる言語現象を定量的に記述した。対象の言語項目は、色彩、味覚、規模、発話モダリティに関連する形容詞である。言語の構造化に重要な役割を果たすのは、意識化の度合が高い意味要因のほか、社会言語学的変異や通時的変化として同定される無意識の言語使用の傾向である。2言語の比較からは文化的要因の重要性が明らかである。また、本研究の過程で2語間の結びつきの強度を測る統計指標のlog-rを開発し、MIスコアと比較して前者の有用性を主張した。
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