研究課題/領域番号 |
23520505
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三谷 惠子 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (10229726)
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キーワード | 言語接触 / スラヴ語 / 借用要素 / クロアチア語 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に引きつづきブルゲンラント・クロアチア語およびルシン語の分析を行った。ブルゲンラント・クロアチア語については、その一派でチェコのモラヴィア南部に移住した集団の最後の話者の言語特徴を詳細に記述し、言語接触論一般で言われている、接触言語における借用要素の現れ方と構造的階層性の問題について考察した。この結果、複数の言語との接触下におかれた言語においては、それらとの接触の強度が同じ程度である場合、類型的近似性の異なる言語間の接触要素の現れ方に異なりが見られること、形式借用(形態素の直接借用)と文法借用(翻訳借用)の間には、構造相似性が見られることが明らかになった。言語接触論では、しばしば、借用要素の現れ方は多様であり、どのような要素でも借用されうるという主張がなされるが、本研究の分析の結果からは、借用の現れ方には一定の構造的階層性があり、その階層性は、クロアチア語とチェコ語のように系統的・類型的にきわめて近い言語間においても保持されることが示される結果となった。これについては現在論文をまとめる作業を行っており、また25年8月にミンスク(ベラルーシ)で開催される国際スラヴィスト会議でこの内容について発表する予定である。 またこの分析をルシン語の場合と比較する作業に取りかかっている。セルビア北部のルシン語は長くセルビア語との接触下にあることから、モラヴィア・クロアチア語で得られた結果と同様のことがいえるかどうか、その検証の作業を行うことが目下の重要な課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに進行している。当初の予定では、24年度までに研究対象言語の言語実態の分析ならびに言語接触論で議論されていることがらの妥当性、方法論上の問題点などの検討を行うこととしていた。これらについては順調に進んでいる。研究対象言語の一つであるソルブ語については24年度に着手するに至らなかったが、これは25年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、ルシン語の調査を行い、24年度の分析結果と照合してさらなる検討を進める。また同時にソルブ語の研究にも着手する。とくにソルブ語では、その通時態の中に現れるドイツ語からの接触要素、借用の構造的階層性について考察を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、スラヴ関係ならびに言語学関係書籍の購入、および24年度の成果発表のための外国出張旅費にそれぞれ40万円ほどを使用する。
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