研究課題/領域番号 |
23520511
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野上 さなみ 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80325828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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キーワード | ドイツ語 / 意味論 / 動詞範疇 / 語彙概念 / インド・ヨーロッパ語 / 対照言語学 |
研究実績の概要 |
研究課題を下位区分して各年度に割り振る形で研究を進めているので、各年度の研究テーマをたどって平成26年度の研究実績概要を説明する。 平成23年度のテーマ「現代ドイツ語動詞の語彙化パターンや特色」では、調査対象をドイツ語1か国語に絞り込み、動詞として語彙化される語彙概念を判別し、語彙化の際の語彙概念の組合わせパターン等について明らかにすることを目的とした。「移動」を叙述する自動詞における特定の概念どうしの共起の可否について、論文「現代ドイツ語の自動詞における語彙化について」(ニダバ第41号、p.98-107、2012年、西日本言語学会編)で発表した。平成24・25年度には、平成26年度に予定していたテーマ「他言語の動詞の語彙化パターンや特色とそれらが動詞範疇に及ぼす影響」を前倒しして考察を進めた。対照言語学的視点で動詞の語彙化を分析し、ドイツ語・フランス語・スペイン語の知覚表現における語彙化の特徴を明らかにし、論文「ドイツ語の知覚動詞における語彙化について」(ニダバ第43号、p.1-10、2014年、西日本言語学会編)として発表した。平成26年度には、平成24・25年度に予定していた課題「現代ドイツ語動詞において語彙化される要素・パターンが動詞範疇に及ぼす影響」に取り組んだ。たとえば、相対的時制の一つである完了形式を作る場合、ドイツ語では「移動」や「状態変化」の概念が基本動詞に語彙化されているか否かの違いが、完了助動詞の選択に決定的な影響を及ぼす。また、基本動詞に語彙化されている概念に応じて、同一の統語的形式の解釈が時制と相に分かれるというケースもある。この場合、基本動詞に含まれる語彙概念が複数の動詞範疇にまたがる形で特定の統語的構造の解釈に影響を及ぼしている。このような個別の事例とともに、動詞範疇に関する基本的な資料やデータの収集を行いながら、断片的ではあるが考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自身が所属する専攻の教員が平成27年3月末に定年退職を迎えるにともなって、専攻のほぼすべての業務に自分一人で当たらねばならなかったことに加えて、退職者の後任採用人事の手続きも加わり、これに相当の時間を費やさざるを得なかった。これと並行して、平成26年度末に約2週間にわたって実施した海外研修の引率とその準備講習会のために、90分授業×7コマ程度の時間を要した。そのため、研究に使うことができるまとまった時間を確保することが大変困難であったため、基本的な資料・データや個別事例の収集、および断片的な考察を進めることで精一杯であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初に計画していたような、4つの動詞範疇に関する体系的な結論に達することはできない可能性もある。その場合には、特定の動詞範疇と動詞に語彙化されている特定の概念・語彙化のパターンとの関連について、どのような関連性が確認できるのかという個別の事例をできるだけ多く収集し、各動詞範疇について部分的な結論を導き出す作業を済ませたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
自分が所属する専攻は専任教員2名で構成されているが、うち1名の教員が平成27年3月末に定年退職を迎えるにともない、専攻の業務ほぼすべてに自分一人で当たらねばならなかったことに加えて、退職者の後任採用人事の手続きのために会議等で相当の時間を費やした。これと並行して、平成26年度末に約2週間にわたって実施した海外研修を引率し、出発までの準備講習会も実施し、のべ90分授業×7コマ程度の時間を要した。 そのため、学期中・長期休業期間中を問わず、研究に使うことができるまとまった時間を確保することが大変困難で、研究のためドイツ語圏に渡航する時間も確保することができず、結果として次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、授業が行われない8~9月や11月初旬にある程度まとまった日数を確保して、資料収集のためにドイツ語圏に渡航したいと考えている。また、研究対象とするドイツ語実例のデータ源として、ドイツ語の文学作品やドイツ語の映画等の映像作品(DVDなど)も購入する予定である。さらに動詞範疇等に関する一般言語学やドイツ言語学の専門書籍の購入も行う予定となっている。
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