研究課題/領域番号 |
23520511
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
野上 さなみ 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (80325828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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キーワード | 動詞範疇 / アスペクト / ドイツ語 / 継続概念 / 対照言語学 |
研究実績の概要 |
研究時間が限られていたため、分析対象をドイツ語に絞り込むとともに、動詞範疇の中でも「アスペクト」に範囲を限定した。さらに、アスペクトの中でも「継続概念」に焦点を当てて研究を進めた。平成27年度には、語彙化が成立している単一の動詞ではなく、機能動詞と複数の語の組み合わせによって成立する分析的構造である慣用表現によって示される「継続概念」について、データ・資料収集と分析を進めた。この慣用表現では、使用される機能動詞・前置詞にバリエーションが確認される例も少なくない。つまり慣用表現は、複数の意味論的な要素が単一動詞ほど語彙化されているとは言えず、「語彙化の度合いが緩やかな形式」として捉えることができる。 継続概念を含む慣用表現に見られる意味論的な特徴や、継続概念の語彙化イメージについて考察を行った結果は、論文「ドイツ語の慣用表現における継続の概念」(機関誌「ニダバ」第45号、西日本言語学会編、2016年3月発行)によって発表した。具体的な内容をまとめると次のようになる。慣用表現における継続概念の語彙化は、具体的な位置関係(XがYにある)を表す叙述形式を基盤とし、そこからより抽象的な継続状態(Xが出来事にある)が比喩的に導き出される形で表現が成立する。これらの表現には、前置詞を介して「名詞化された基本動詞」と「継続相の機能動詞」を組み合わせることにより、基本動詞の動作様態に関わらず、基本動詞が叙述する出来事に対して「内的な視点」(imperfective aspect)を提供する効果がある。 本年度の研究によって、継続概念を主軸とした動詞範疇と語彙化の関係の一端を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属大学での業務との兼ね合いで、予定していたとおりにはドイツ語圏に渡航することができず、資料やデータの収集等に遅れが出たため、研究開始時に計画していた他言語とドイツ語の比較対照が予定通りには進んでいない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
最終的にはドイツ語と他言語との比較対照を行う予定であったが、他言語の資料・データ収集の時間の確保が困難であることから、研究の焦点をドイツ語内部における動詞範疇と語彙化の関係に絞り込んでさらなるデータ収集を進め、他言語との比較対照を最小限度に留める形で結論を導き出したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料・データ収集のため、毎年度ドイツ語圏への渡航を計画していたが、平成23~26年度までは所属大学の業務のために、渡航する時間を確保することができなかった。その結果、予定していた旅費の繰り越しが続いたため、平成28年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年8~9月の間に、資料・データ収集のためドイツ語圏に渡航する予定にしており、これが平成28年度使用予定額のおよそ半分程度を占めることになると考えている。また、ドイツ語学・一般言語学関係の書籍資料、会話分析の対象としての映像資料(DVDなど)、備品等の購入を行う予定である。
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