研究課題/領域番号 |
23520512
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小方 伴子 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (10347255)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 『国語』 / 校勘学 / 『国語補音』 / 顧千里 / 黄丕烈 / 段玉裁 |
研究概要 |
『国語』の批校本をめぐる諸問題の中から、今年度は顧千里撰『校刊明道本韋氏解国語札記』の成立過程及び編集原則を課題として取り上げた。『校刊明道本韋氏解国語札記』(以下、『国語札記』)は宋刊明道二年本『国語』の重刻に合わせて刊行された校勘記である。『国語』を読む上で、汪遠孫の『国語明道本考異』と共に最も重要な参考文献とされるが、公序本との異動を網羅的に記した『国語明道本考異』とは異なり、『国語札記』には撰者顧千里の見識及び主張が色濃く反映されており、「読む人が読めばわかる」という書き方になっている。本研究では、『国語』の諸版本、黄丕烈、顧千里、恵棟、段玉裁などの『国語』批校本、『国語補音』『史記集解』など関連資料を参照しつつ、『国語札記』の成立過程及び編集原則を明らかにした。さらに『国語札記』の詳細な研究を通して、乾隆嘉慶年間の校勘学のあり様、校勘学者たちの宋刊本重視の実態を論じた。結果は口頭発表(日本中国学会)及び論文(顧千里撰『校刊明道本韋氏解国語札記』成立考)の形で公表した。『校刊明道本韋氏解国語札記』は陸敕先、恵棟、戴震、段玉裁などによる『国語』の校勘作業の積み重ねの上に書かれたものであり、乾隆末期から嘉慶初頭にかけて黄丕烈及び顧千里と交遊のあった学者や蔵書家たちの共同作業のような一面も有している。利用するにはその重層性を充分に理解しておく必要がある。それを具体的に示し得たことも本年度の研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嘉慶五年刊行の『校刊明道本韋氏解国語札記』は、当時の校勘学を知る上で最も重要な資料のひとつである。本年度の研究では、その成立過程と編集原則をかなりの部分明らかにすることができた。しかしながら、撰者顧千里が参照した文献とその依拠本、宋庠の校勘が他の文献に与えた影響、恵棟の『国語』校本の利用のされ方など、『校刊明道本韋氏解国語札記』をめぐる課題は少なくない。次年度以降も引き続き研究を続ける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)『校刊明道本韋氏解国語札記』には、恵棟、段玉裁、戴震など清朝を代表する学者の校語が数多く引かれている。最も多いのが恵棟の校語である。恵棟の校語は、彼自身の『国語』批校本(中国国家図書館所蔵)から抜粋されたものである。恵棟の『国語』批校本の書き入れは、『国語』及び清朝校勘学における貴重な資料である。活字化し、次年度以降の研究に備えたい。(2)『校刊明道本韋氏解国語札記』には恵棟、段玉裁などの批校本に書き入れられた校語が数多く取り入れられており、引用文献も多岐に亘る。正確に読み解くには、顧千里の利用した批校本を参照し、引用文献の依拠本を特定する必要がある。そうした作業を踏まえて『校刊明道本韋氏解国語札記』の詳細な訳注を作成する。(3)日本に於ける『国語』の伝承を、中国に於ける版本の流通を踏まえて整理する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)中国国家図書館所蔵の恵棟『国語』批校本の書き入れを写し取り、活字化して公開する。そのため中国国家図書館における一週間程度の出張を計画している。(2)『校刊明道本韋氏解国語札記』の中から「周語(上中下)」の詳細な訳注を作成する。撰者顧千里が利用した批校本、引用文献の調査のため、中国国家図書館、蘇州市図書館、台湾国家図書館にそれぞれ一週間程度の出張を計画している。(3)日本に於ける『国語』の伝承の詳細を、和刻本の分析を通して整理する。和刻本及び関連資料の調査のため、国内数ヶ所の図書館にそれぞれ二三日の出張調査を計画している。(4)研究に必要な書籍、PC用品を購入する。
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