研究課題/領域番号 |
23520512
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小方 伴子 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (10347255)
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キーワード | 『国語』 / 批校本 / 清朝校勘学 |
研究概要 |
顧千里撰『校刊明道本韋氏解国語札記』(以下、『国語札記』と称す)は重刻明道二年本『国語』の巻末に附された校勘記である。重刻明道二年本を底本とする『国語』の校勘記には、同書のほかに汪遠孫の『明道本攷異』があり、「共にもっとも重要な参照文献」(大野峻『新釈漢文大系国語』解題)とされるが、両者の編集方針は大きく異なる。『明道本攷異』が公序本との異同をほぼ網羅的に挙げているのに対し、『国語札記』では撰者の設定した基準に従って収録する項目が厳選されている。『国語札記』を利用する際にはその基準を把握しておく必要がある。また『国語札記』には、陸敕先、恵棟、戴震、盧文ショウ、段玉裁などの『国語』校本の書き入れや、段玉裁、黄丕烈、李鋭、夏文燾など撰者顧千里と交遊のあった校勘学者や蔵書家たちの校語が適宜或いは随意取り入れられており、正確に読み解くにはそれらの依拠本や利用方法等を踏まえる必要がある。 報告者はこれまで数年にわたって『国語』批校本の現地調査を行ってきた。今年度はその結果をもとに、『国語札記』(周語上)の詳細な訳注を作成し、『人文学報』(No.478)に発表した。さらに『国語札記』のデータベースを整備し、公開可能な状態にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は中国国家図書館及び台湾故宮博物院図書文献館に所蔵されている『国語』の批校本(書き入れ本)の調査にもとづいたものである。今年度発表した訳注では、中国国家図書館所蔵の恵棟校本、黄丕烈校本、盧文ショウ校本、段玉裁校本の臨本、台湾故宮博物院図書文献館所蔵の顧千里校本を利用した。しかし調査の途中で中国国家図書館が補修工事にはいり、善本閲覧室での原本調査が不可能になった。今年度発表した『国語札記』の訳注で引用した『国語』批校本の書き入れの一部は、マイクロフィルム調査にもとづくものである。信頼性を高めるために、補修工事が終わり次第、原本による再調査を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
①今年度に引き続き、『国語札記』の訳注(「周語中」以下)を作成する。 ②清朝における『国語』の受容と伝承を論じるための基礎資料として、「『国語』書目題跋集成」を作成する。 ③中国国家図書館の補修工事が終わり次第、『国語』批校本の調査を再開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①『国語札記』の訳注(「周語中」「周語下」)を作成する。 ②「『国語』書目題跋集成」作成の準備段階として、『中国著名藏書家書目匯刊』(商務印書館)、『宋元版書目題跋輯刊』(北京図書館)、『中国歴代書目題跋叢書』(上海古籍出版)、『書目題跋叢書』(中華書局)などから『国語』に関する記述を収集し、整理する。 ③状況が許せば『国語』批校本の調査を再開する。
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