研究課題
2011年度は、本研究申請時の計画通り、これまでの資料の分析に基づき、現地調査の準備を行い、12月と3月に現地調査を実施した。この2回の調査で、動詞による連体修飾の例をある程度収集できた。 動詞が名詞を修飾する際は、動詞が特別な形式を取るが、基本的には連体修飾用の接辞を取るか、重複形になると考えられる。今回の調査で得られた資料から、これまで連体修飾に使われると考えていた形式が、実は使われないと考えられることがわかってきた。このことは、連体修飾に使われる接辞の出現について首尾一貫した説明するためには好ましい結果である。 なお、本研究の内容の一部を、2011年9月に神戸市外国語大学で行われた第17回ヒマラヤ諸語シンポジウムで発表した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の第1年度は、動詞による連体修飾を中心に資料を集める計画であり、基本的には計画通り研究が進んでいると言える。ただし、動詞の状態性によって連体修飾の際の動詞の形式が異なるとの予想のもとに研究を開始したが、予想を確定するにいたっていない。むろんこの予想を覆すような資料も発見されておらず、基本的にはこの方向性は間違っていないと考える。むしろ、今後形容詞や名詞が連体修飾する場合の資料を収集することによってこの予想を確定できるであろう。なお、これまでより踏み込んだ解釈が可能となる発想を得たので、より首尾一貫した分析が可能になると期待される。
動詞の状態性と連体修飾形式の関連については、さらに資料の収集が必要であるが、基本的には、計画通り、今後は形容詞の連体修飾についての資料収集と考察に進むべきであると考える。「達成度」欄で記入したとおり、さらに踏み込んだ解釈が可能となりそうな発想を得たが、状態性と関わる可能性が高いので、この点を明らかにできる資料を収集しなければならない。そのためには、次回調査までに動詞の状態性を明確にできる基準を設定しなければならないと考えている。
これまでのところ、研究はほぼ計画通り順調に進んでおり、2012年度において、これまで収集した資料の分析を進めるとともに、資料の収集のための現地調査を行う。今年度は形容詞の連体修飾を中心に研究を進めるので、その点に関連する書籍を購入するなど、公刊された資料の収集、および例年通り、年度末に予定している現地調査によってキナウル語の一次資料を収集する。研究費は、現地調査のための旅費、資料購入や資料整理のための文具購入などにあてる。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Wataru Nakamura and Ritsuko Kikusawa eds., Objectivization and Subjectivization: A Typology of Voice Systems, Senri Ethnological Studies
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地球研言語記述論集
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