研究課題/領域番号 |
23520519
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研究機関 | 宮城学院女子大学 |
研究代表者 |
木口 寛久 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (40367454)
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研究分担者 |
高橋 将一 一橋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70547835)
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キーワード | 国際研究者交流 オーストラリア |
研究概要 |
平成24年度は、前年度の国際学会(Generative Approach to Language Acquisition 2011)における実証実験報告をもとに、具体的な研究課題であるpseudo-clefts とそれに関する再構築現象の理論的分析に本格的に着手した。 主に、①具体的な研究課題の一つであるinverted specificational pseudo-cleftsの統語論的分析の精緻化をはかる、②その構文内での否定極性要素の認可と再構築の相関に理論的説明を与える、という二点に対して理論的考察、検討を行った。 再構築現象は否定極性要素の認可には適用できないことが知られている。前年度の実証実験報告にて、英語のinverted specificational pseudo-cleftsの構文中では、否定の作用域内でしか現れないはずの等位接続のorが否定の作用域外でも存在できることが、英語母国語話者幼児の文法でも成人のそれと同様であることが確認された。これは再構築現象が可能な構文ならすべての要素が等しく再構築されるわけではないことを言語獲得の側面からも示唆していることとなる。 本年度は、この現象に対して、Heycock & Kroch (2002)にて提案されている、「表層構造上で、否定極性要素が否定辞をc-統御してはならない」という知見から説明できるとの分析を試みることができた。並びに、前年度の実証実験報告が"Advances in Language Acquisition"に採択された(研究発表参照)。更に、この実験結果及び、その理論的考察を海外共同研究者と共に一本の論文としてまとめ、今年度末に国際研究雑誌に投稿することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な研究課題として掲げた①inverted specificational pseudo-cleftsでの否定極性要素認可の再構築現象についての理論的・実証的研究においては、研究実績の概要に述べたように、前年度の実証実験結果を踏まえた、理論的考察を海外協同研究者および研究分担者と検討し、研究論文として国際研究雑誌に投稿することができた。よって、①に関しては当初の計画以上に進展していると言える。 ②cleftsでの再構築現象の理論的・実証的研究においては、今年度末、海外共同研究者所属機関オーストラリア・シドニーのMacquarie Universityに赴き、複数の実験パラダイムを具体的に立案、平成25年度中の実証実験実施に向けて研究を進めている。よって、②に関しては当初の計画通り、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度となる平成25年度は、当初の計画に基づき、cleft構文の再構築現象についての実証実験を海外共同研究者とともに行う。そして、ここまでの実証実験の結果に基づき、言語獲得理論モデルの検討、先に提案した理論言語学的仮説の修正、及び実験結果の生成文法理論研究における具体的な意義を考察する。特に、平成24年度末に投稿した論文の査読内容に沿った指針を取りつつ論文の改訂を試み、平成25年度中での採択決定を目指す。また、英語のinverted specificational pseudo-cleftsの構文中の否定極性要素の認可と再構築の相関についての理論的説明に関しては、研究分担者と検討し、独立の研究成果として、学会発表、論文出版を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は投稿済みの論文の改訂打ち合わせ及び、cleft構文の再構築現象についての実証実験を海外共同研究者とともに行うための海外渡航費用として、研究費を主に使用する。また英語のinverted specificational pseudo-cleftsの構文中の否定極性要素の認可と再構築の相関についての理論的説明に関して、研究分担者との国内打ち合わせ、学会参加のための国内旅費としても研究費を使用する。並びに、研究用の書籍、文献購入費として研究費を充てる計画である。
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