研究概要 |
本研究課題の最終年度である平成25年度は、前年度末に本プロジェクトで実験を行ったpseudo-cleftsとそれに関する再構築現象の理論的分析を論文としてまとめ、国際研究雑誌Studia Linguisticaに投稿したのち、掲載決定を目指して、Studia Linguisticaからの査読結果を踏まえ、論文を改訂し、再投稿した。 特に、これまでのinverted specificational pseudo-cleftsを用いた2つの実験結果がもたらす言語獲得理論に対する含意について検討を重ねた。これまでの実験結果は、英語を母国語とする3-4歳児に内在する文法にも音韻部門(Phonetic Form)と意味部門(Logical Form)といった抽象的なレベルが存在することを強く示唆するものであり、生成文法的な文法への接近法に支持を与えるものである。その一方で、本プロジェクトにおける実験の結果は、そのような複数のレベルの介在を否定するGoldberg (1985, 2003, 2006)の提案するthe constructive approachの想定とは相反するものである。加えてGoldberg(1985, 2003, 2006)は、言語獲得には一般的な認知メカニズムのみが関与しており、言語機能の生得性は否定する立場を取るが、本プロジェクトで得られた実験結果を、一般的な認知システムのみで説明するのは困難であると思われる。すなわち、本研究の研究結果は、複数の表示レベルが内包されている言語の生得的モジュール性を示唆するのもである。 上記のこれらのポイントを指摘することを念頭に置きながら、本プロジェクトメンバーとともに論文を大幅に改訂し、再投稿した。第二次査読を経て、平成25年度3月にStudia Linguistica誌より、論文の掲載採用の決定の報告を受けた。研究業績参照。
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