研究課題/領域番号 |
23520520
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
齋藤 智恵 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (50458402)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 言語景観 / 多言語化 / コミュニケーション |
研究概要 |
平成23年度の研究目的は質的調査を用いて医療機関の外国人に対する言語対応と多言語化の実態を把握することである。関東地方にある2000か所の医療機関を対象に質問紙を配布し340の医療機関にご協力いただいた。内容は医療機関の属性、外国人に対する言語対応の実態、言語景観の現状の三項目からなる。外国人患者とのコミュニケーションで困った経験の有無については受付で34%が、診察において31%が、薬局に置いては13%が「よくある」または「時々ある」と答えている。しかしながら、言語景観における多言語化は進んでいない現状がわかった。問診票に使用されている外国語は英語が17、中国語が2、韓国語が1、ポルトガル語が3と非常に少ない。パンフレットにおいては英語が10、その他の言語が各1である。看板、院内案内図、各部屋の表示では、いずれも英語が25から30と紙媒体よりは多いが、その他の外国語は1つあるか皆無である。最後にインターネットのホームページに使用している言語は英語が19、中国語が8、韓国語が3、ポルトガル語が1という結果であった。言語景観の観点からは顕著な多言語化は観察できず、外国人患者の言語ニーズへの積極的な対応はみられなかった。言語景観調査と同時に外国人患者の来院時の様子と医療者の対応を調べている。受付、診察では200を超す医療機関で「患者が日本語のできる友人や通訳と来院する」と述べている。また、約150の機関で「患者の日本語が堪能なので日本語で対応」「日本語でゆっくりと丁寧に対応」していると述べている。この結果から、外国人患者自身の医療現場でのコミュニケーションにおける積極的な対応と、外国語だけでなく対応言語としての日本語の存在がうきぼりになった。今後の質的研究において、これらの結果と多言語化の進まない言語景観との関係を明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の調査では医療機関の言語対応の現状を広く把握することを目的として位置づけ質的調査を行った。アンケート調査の回収率が2割以下であったが、言語景観研究において340もの施設から調査協力を得られたものは例がなく貴重な調査結果といえる。医療機関の言語対応と言語景観の現状の傾向を把握することができ、本年度の調査の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後2年間も当初の予定通りに計画を進める。平成24年度は医療機関を訪問し現地調査を実施する。言語景観の観察と医療機関へのインタビュー調査によって言語景観の特徴と問題点を明らかにする。平成25年度は医療機関の言語ニーズを外国人の視点から明らかにする。在日外国人3000人を対象にアンケート調査を実施する。医療現場の現状を外国人患者の言語ニーズから分析し、今後の言語景観のあるべき姿を提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は現地調査にかかる旅費と謝礼金、またデータ入力委託費が必要である。50か所の医療機関への現地調査を予定しており旅費が大半を占める。また、平成25年度は3000人へのアンケート調査を予定しており、協力者の募集とアンケート実施にかかる謝礼や切手代などが必要である。
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