研究課題/領域番号 |
23520520
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
齋藤 智恵 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (50458402)
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キーワード | 言語景観 / メディカルツーリズム |
研究概要 |
多言語表示と外国人患者への対応を調査するために現地調査と医療機関職員へのインタビューを実施した。期間は2012年9月から2013年3月まで、関東地方を中心に24の医療機関を対象とした。また、日本の医療機関との比較対象として積極的に外国人患者を受け入れている韓国、ソウルにある2病院とタイ、バンコクにある2病院を調査対象とした。 1. 日英のバイリンガル表示の標準化・日本語だけで院内表示をしている医療機関は半数を下回った。外国人患者がほとんど来ない医療機関でも日英の表示をしており、医療機関の言語景観は単言語表示から多言語表示の萌芽期にさしかかっていると考えられる。 2. 地域性の反映・積極的に多言語表示をしている、特に英語以外の言語を使用している医療機関にはその地域性に特性があった。日系ブラジル人のコミュニティが近隣にある埼玉のA病院ではポルトガル語の表記が院内のあちこちにみられた。また、神奈川県のB病院は日系ブラジル人や中国残留孤児やその家族が多く住んでいる地域にある。この病院では8言語表記をスタンダードとしていた。 3. 外国人患者に対応する部署・積極的に外国人対応を行っている医療機関には特別な部署がある場合が多い。外国人を積極的に受け入れているソウルとバンコクの4機関にはそのような部署があり、受付から診療まで母語で対応することが可能である。また、対応可能な言語も4から9言語と多様である。日本で外国人対応の部署があるのは3機関であった。言語は、英語、英語と中国語、ポルトガル語と限られており、その部署では診察まですることはできない。 4. 共通の傾向・総合受付(受診科振り分けをする場所)と外来には、多言語対照表・多言語問診票などがあったが、活用されていない場合が多い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画ではより数多くの訪問調査を予定していた。しかしながら、「多言語での対応はしていない」「外国人患者に対して積極的な対応はしていない」などの理由で訪問調査への協力を得られないケースが多く、わずか24の医療機関への調査に留まった。 調査対象の数は少なくなってしまったが、医師、看護師、薬剤師、事務職員、通訳など多くの協力者から日本の医療機関での言語サービスの現状や今後の理想的な外国人対応のヒントとなる有益な情報を得ることができた。 また、調査対象を海外に広げ、メディカルツーリズムや多言語対応の現状を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は外国人患者の立場から日本の医療機関の言語サービスを中心とした対応について調査する。日本在住の外国人にアンケート調査を実施し、医療機関を利用した際によかったこと、または困った経験などを収集し、外国人患者の言語ニーズを明らかにする。これまでの医療機関への調査と外国人の言語ニーズをすり合わせることによって、日本の医療機関における理想的な言語サービスを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
アンケート調査を多言語で実施するため、作成と分析にかかる翻訳料と協力者への謝礼が主な必要経費となる。加えて、今年度までの成果発表にかかる旅費などが必要である。
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