初年度と次年度には医療機関の多言語表示、外国人患者への対応について調査を行った。今年度は日本在住の外国人を対象に、受診行動や言語表示に対するニーズに関する質問紙調査を実施した。434人から協力を得たが、その内訳を出身国別にみると中国134人、韓国107人、ベトナム143人、モンゴル50人、男女別では男49%、女51%、日本滞在期間の平均は1年6か月であった。日本滞在期間中に、付き添いまたは受診などで医療機関を訪れた経験のある者は183人であった。医療機関の選択理由としては、128人(医療機関への訪問経験者の70%)が「家、または職場の近くだったから」と答えた。外国人患者は言葉の壁や習慣の違いなどから周囲の人々や所属機関からの推薦や紹介によって選択しているのではないかと予測したが、立地条件などの利便性を優先させていることがわかった。 しかしながら、日本人患者と同様に受診行動を行っているわけではない。昨年度までの医療機関に対する調査で、外国人患者は日本語が話せる付き添いを伴って医療機関を訪れるケースが多いとの回答が多かったが、外国人患者に対する調査でも同様の傾向が明らかになった。受診の際に「日本人」に付き添ってもらった人は25人(医療機関への訪問経験者の14%)、「日本人ではないが日本語が堪能な人」に付き添ってもらった人は78人(43%)であった。また、「医療通訳がいたら利用したいか」との問いには、「無料であれば利用したい」が291人(全回答者の67%)、「有料であっても利用したい」が68人(16%)と答え、83%が医療通訳の利用を希望していることがわかった。 言語景観に関する項目(母国語表示、または英語表示の必要性)では、最も母語表示の希望が多かったのが「薬の説明書」で274人(63%)、次に「問診票」で230人(53%)であった。看板や院内案内図などの母語表示よりも、紙ベースの書類などの母語での提示を望む傾向があることがわかった。
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