研究課題/領域番号 |
23520522
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
高田 博行 学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)
|
研究分担者 |
SCHARLOTH J. 獨協大学, 外国語学部, 准教授 (70585786)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / ドイツ語史 / 言語規範 / 日常語 / 方言 / 話しことば |
研究概要 |
18世紀ドイツにおける口語性に関わる言説、とりわけ「日常語」に関わる言説について、機械可読のデジタルデータとして蓄積する作業を開始した。この「18世紀ドイツ語口語性言説コーパス」を分析することで、「書簡」、「交際」、「方言」、「生活」、「低地ドイツ語」、「柔軟」、「親密」、「歓談」などの、口語性に関わるキー概念が抽出できた。その際、海外共同研究者から助言を得た。 当該年度の暫定的結論としては次のことがわかった。1)東中部ドイツ・低地ドイツ型の標準文章語がスイス、オーストリア、バイエルンにも普及し終えた1770年代になると、公的状況で書かれる標準文章語(文語性)とのコントラストにおいて、私的状況で語られる日常語(口語性)が明確な輪郭を得た。2)18世紀末に、都市部の教養人たちは私的状況では方言を放棄せず、公的状況では標準文章語(文語)に近い話し方をする二言語併用状態にあった。その結果、方言と標準文章語とが混交して、両者を仲介する日常語が形成された。ここでは、日常語は私的状況と公的状況の両方で話された。3)公的状況で話される「標準ドイツ語の日常語」は、公的な通信文などに書き綴られることによって、日常語は文字としても実体化した。4)日常語は、口語性と文語性の間の広いスペクトルをカバーすると同時にメディアとしても音声と文字の両方を有するに至った。日常語は、人工的で公的な標準文章語と素朴で私的な方言との間の緩衝材であったのであり、これを手段として用いれば、ひとは多様な半公的・半私的状況においてその都度口語性・文語性の程度をうまく調整してコードスイッチングすることができたのである。5)大都市ベルリンにおいて日常交際語が際立ったのは、まさに都市化にともなう日常生活の多様化のなかで、公私のことばに微妙な濃淡を与える必要があったからであろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
18世紀ドイツにおける言説を対象とする本研究においては、「設備備品費」および「消耗品費」による原典資料の調達が成功の大きな鍵となる。そのため、復刻本・翻刻本、インターネット上に公開されている資料等について選定を行い、購入と入手を始めた。電子データ化されていない資料について、まずPDFの形にした上でOCR(光学式文字認識)ソフトを用いて電子データ化を進めた。このコーパス化の作業の際、「謝金」を利用して大学院生を雇用した。ある程度の大きさのコーパスができた時点で、統計処理のプログラム(一部は研究分担者自身が作成)により、文法情報等のタグの付け方やキーワードの抽出法等について試行し、必要に応じてプログラムの修正を図った。
|
今後の研究の推進方策 |
資料の電子データ化を終え、「18世紀ドイツ語口語性言説コーパス」を完成するとともに、その統計的処理法についても確定する。海外共同研究者であるStephan Elspass教授を5月~6月に日本へ招聘し、とくに18世紀の言説の解釈法に関して専門的知識の供与を受ける。完成したコーパスに統計的処理(例えば、コロケーション、時期ごとの特徴語、肯定的形容詞と否定的形容詞の抽出など)を施し、その分析結果に基づきながら、本研究の研究課題の解明に取り組む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「設備備品」および「消耗品費」として、研究データとするべき原典資料(第一次資料)を入手する。わが国で入手困難な資料を海外の図書館において調達するために、「外国旅費」を利用した外国出張を行う。電子データ化に際して、研究代表者と研究分担者が所属する大学でドイツ語学を専攻する大学院生を「謝金」により雇用し、その補助を委託する。海外共同研究者1名を日本へ招聘し、本研究遂行の上で助言を受けるために、「外国旅費」による支出が必要となる。
|