研究課題/領域番号 |
23520524
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
米山 聖子 大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (60365856)
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研究分担者 |
北原 真冬 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00343301)
田嶋 圭一 法政大学, 文学部, 准教授 (70366821)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レキシコン / 音声知覚 / 音声産出 / 語彙表示 / 第二言語 / 音韻論 / シュミレーション |
研究概要 |
本研究は3つの課題について取り組んでおり,課題ごとの研究実績の概要は以下の通りである。 課題1:母語と外国語のレキシコンの特性と産出・知覚(米山,Munson):先行研究から日本語母国語話者が英語を理解する際に,レキシコンの特性が影響を及ぼす語彙認識過程だけではなく,英語の音素認識が重要な役割を果たしている可能性があることが明らかになってきた。平成23年度は,予備実験データを解析し,Benki (2003)で用いられた実験方法が第二言語学習者においても有効であるかを検討した。その結果,外国語における音声語彙認識過程についても有効である可能性があることが明らかになってきた。また,レキシコンの特性である単語親密度が英語の子音の認識にどのような影響を与えているかについての検討も行った。予備実験の成果はNakamura and Yoneyama (2011)として報告した。 課題2:レキシコンの特性と音韻論的な検討(北原,米山):シミュレーション研究に利用する日本語と英語の音声データベースを分析することにより,レキシコンの特性について詳しく明らかにした。具体的には語彙近傍密度,頻度,機能負担量などの指標の相互関係や種々の韻律単位についての数量的解析を日本語話者と英語話者のレキシコンとして想定されるデータベースに対して行った。 課題3:レキシコンにおける語彙表示について(田嶋,米山):日本語話者による英語音声単語の知覚に関する従来の研究から,英単語の音節構造が正確な知覚を妨げる要因であることが示された。しかし,母語と外国語のレキシコンの語彙表示と音声知覚の関係については明らかになっていないのが現状である。平成23年度は,日本語の外来語が英語の単語を知覚するのにどのような影響があるかについて検討を行った。その成果はTajima (2011)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・3つの課題に関して,平成23年度に予定していた項目を達成できている。・日本音声学会全国大会やThe 17th International Congress of Phonetic Sciences, Hong Kongにおいて,成果の一部を報告することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年目以降は,以下の課題に取り組むと同時に,実験結果などを随時国内の学会や,海外の学会・国際会議などにて発表し,学術誌に投稿する予定である。 課題1:母語と外国語のレキシコンの特性と産出・知覚(米山,Munson):平成23年度に検討した実験手法を用いて,日本語話者の音声語彙認識過程を探るための日本語話者を対象とした知覚実験を実施する。安定したデータを得るため,個別実験は相当数の参加者を対象に実施する。また,統制群として英語話者についても同一実験をミネソタ大学で実施する。 課題2:レキシコンの特性と音韻論的な検討(北原,米山):日英語におけるモーラや音節の機能負担量の計算や,その他のレキシコンの特性についての分析を引き続き行いつつ,これまでに得られた実験結果と音韻理論や学習モデルを実装したソフトウェアによるシミュレーションの比較検討を行う。また,同定課題や,対立する音同士の弁別課題などによって明らかにされる機能負担量の大小が,産出において当該音の調音上の揺らぎ(不正確さ)と相関するかどうかを検証する予定である。 課題3:レキシコンにおける語彙表示について(田嶋,米山):異なる英語力を持つ日本語話者の英語のレキシコンにおける語彙表示を明らかにするために,日英語において韻律構造が著しく異なり,日本語でも外来語として定着している単語(例:「Christmas」対「クリスマス」)を刺激語とした知覚実験や産出実験を行う。実験を通して,母語のレキシコンや,習得過程にある第二言語のレキシコンの語彙表示において,モーラや音節といった日本語・英語を特徴付ける韻律単位が相対的にどの程度反映され,英語力がどのように関連しているのかについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・ソフト:本研究を遂行のため3機関で共通環境を整える。通常の文章作成・表計算・プレゼン用ソフト(Microsoft Officeなど)に加え,音声合成プログラムのStraightの利用に必要なプログラミングソフト(MatLabなど)や実験制御ソフト(E-primeなど)で,平成23年度に購入していないものを順次購入する。・実験関連機器:実験遂行のために必要な関連機器についても3機関で共通環境を整える。録音機器1台,マイク1本,ヘッドフォン1個,ボタンボックス1台を購入予定であるが,平成23年度に購入していないものを順次購入する。・実験参加者謝金:種々の実験において被験者の協力を得ることは,本研究の遂行において不可欠である。研究代表者・研究分担者それぞれの機関において,2000時間の協力を予定している。・研究補助:円滑な研究遂行のために,研究代表者・分担者・協力者の補助者として大学生・大学院生を複数名雇用する。・旅費:経費は海外での実験遂行に関わる海外旅費と成果発表の為の国内・海外旅費に大別される。本研究を効率的に遂行するには多数の英語母語話者の実験参加が不可欠である。英語母語話者のデータ収集を目的とした海外出張を行う予定である。研究成果を段階的に公表し,その後の研究の進め方について建設的なフィードバックを定期的に収集するため,年度ごとに国内の学会にて成果発表を行う予定である。
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