研究課題/領域番号 |
23520529
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
村杉 恵子(斎藤恵子) 南山大学, 外国語学部, 教授 (00239518)
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キーワード | 主節不定詞 / Root Infinitives / Truncation Hypothesis / Speech Act Phrase / Tense / 生成文法 / Generative Grammar / 言語獲得 |
研究概要 |
2012年度は、主節不定詞現象について以下の5点に着目して記述的・理論的考察を行い、発表した。以下紙面の関係で改行せずに列挙する。 (1)日本語の主節不定詞現象の記述(2)イタリア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、トルコ語、アラビア語、ギリシャ語、英語、韓国語などの主節不定詞現象との比較統語論的研究(3)主節不定詞現象の大人と子供の文法の質的相違と相同について(4)主節不定詞現象の理論的分析(5)幼児の構造獲得の一段階としての主節不定詞現象の分析:CP, TP, VPそして談話レベルの構造とのかかわり方について、特にLuigi Rizziの提言したTruncation Hypothesisに基づく分析とさらなる発展的提言を行う、の5点である。 特に2歳前後の幼児の文構造は、主節不定詞現象がみられる時期に時制句で切り取られている(Truncation Hypothesis, Rizzi 1993/1994)にもかかわらず、終助詞(ね、な)などの、時制句よりも構造的に上部に位置するSpeech Act Phraseが存在することに着目し、膠着語言語であるからこそ見える言語獲得の初期の構造についての日本語分析を、英語・西フレミッシュ語と比較しつつ進めた。 ここで進めた記述的・理論的・対照言語学的分析は、まず、南山大学紀要において記述データと記述的一般化を院生と整理しまとめた。そこでの一般化と今まで積み重ねられてきた研究に基づき、新たに理論的分析を行ったもの(上述したTruncation Hypothesisへの支持となる議論)を、日本文法学会(名古屋大学、招聘)、ヨーク大学・南山大学・神戸大学合同ワークショップ(ヨーク大学 (連合王国)、本科学研究費による出張)などにおいて発表し、多くの言語学研究者から、異なる言語を背景としたコメントをいただくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の研究実績に挙げた(1)から(5)の項目について、本年度は成果を得ることができたように思う。以下、紙面の関係で改行せずに列挙する。 (1)日本語の主節不定詞現象の記述については、データベースに基づき裏付けることができた。(2)イタリア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、トルコ語、アラビア語、ギリシャ語、英語、韓国語などの主節不定詞現象との比較統語論的研究を進め、これらの言語を3つのタイプに類型論的に整理することができた。これは言語獲得の視点からみた世界の言語の類型であり、言語学上新たな視点であるように思われる。(3)大人の文法と子供の文法との主節不定詞現象の質的な相違と相同について記述的に整理した結果、これらが質的に異なるものではないことを示し、言語獲得可能性において問題がないことを示した。(4)主節不定詞現象の理論的分析を行う上で、その時期にみられるほかの現象と結びつけながら、相対的に分析をすることができた。(5)幼児の構造獲得の一段階としての主節不定詞現象の分析:CP, TP, VPそして、談話レベルの構造とのかかわり方について(Luigi Rizziの提言したTruncation Hypothesisに基づく分析とさらなる発展的提言)考察した点が今年度(2012年度)の主要な成果である。南山大学言語学研究センターならびに国立国語研究所の援助も受けながら、Luigi Rizzi氏を招いて、ワークショップを開催し、そこで、本発表の成果を披露し、新たな提言についてのコメントを、ご本人からも頂戴することができた。これらの成果を今後につなげていく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、主節不定詞現象について以下の点に着目し記述的理論的考察を行い、発表する予定である。以下、紙面の関係で改行せずに列挙する。 (1)日本語の主節不定詞現象の記述的妥当性を確認する。(2)イタリア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、オランダ語、トルコ語、アラビア語、ギリシャ語、英語、韓国語以外の言語の主節不定詞現象に関する比較統語論的研究にも視野を向け、対照言語的分析から一般化の基盤を強化する。(3)大人の文法と子供の文法との主節不定詞現象の質的な相違と相同について詳細に検討する、(4)主節不定詞現象の理論的分析の精緻化を進める。(5)幼児の構造獲得の一段階としての主節不定詞現象の分析:CP, TP, VPそして、談話レベルの構造とのかかわり方について考察する。特に、2012年度南山大学言語学研究センターのワークショップにおいて発表した拙論(Luigi Rizzi氏の提言したTruncation Hypothesisに基づく分析とさらなる発展的提言)と、それに対するLuigi Rizzi氏ならびに出席者(ことに言語学研究センター長の斎藤衛氏)からの示唆とコメントを中心に、現在の分析の理論的妥当性を検証し、論文としてまとめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、これまでの研究分析の記述的妥当性と理論的妥当性を再度検討し、精緻化した上で、研究成果をまとめ発表する。記述的成果と理論的成果を保存し、まとめ、発表し成果を発信するために、研究費を使用する所存である。 記述的成果を保存し、まとめ、整理するためにアルバイトとPCならびに付属品を購入する。また、理論的成果を進めるために、旅費・アルバイトを中心に研究費を使用する予定である。
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