研究課題/領域番号 |
23520532
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 象形文字ルウィ語 / カルケミシュ碑文 / initial-a-final / r転化 / Sangara王 / テル・アフマル碑文 / アレッポ碑文 |
研究概要 |
象形文字ルウィ語の歴史言語学的研究が発展しなかった理由は、同言語資料の成立年代が明白でなかったことが大きな理由であった。しかし、D.J.Hawkinsの「Corpus of Hieroglyphic Luwian Inscriptions」(2000)の公刊によって各象形文字ルウィ語碑文の成立年代が明確になったおかげで、同言語の通時的な考察が可能になった。筆者は先行研究として、特に時代区分が同定できるカルケミシュ碑文の言語変遷をinitial-a-finalとr転化に限定して分析すると、同現象が通時的な変遷を同定する重要な言語指標であることを指摘した。つまり、initial-a-finalは古い時代に出現傾向が強く、後代の碑文ほど表出されない傾向がある。逆に、r転化は古い時代の碑文には生起せず、後代の碑文ほど生起傾向が強いことを指摘した。同指標が他の地域の象形文字ルウィ語碑文言語においても同様の表出傾向を指摘することが出来れば同指標の信頼性が実証されることになる。そこで、Sangara王もアッシリア資料から活発な外交政策を行ったと言われているカルケミシュ地域に近い周辺地域のビート・アディニ地域からの出土資料によって検証した。特に象形文字ルウィ語碑文資料としては、テル・アフマル碑文 (Tell Ahmar)とアレッポ碑文(Aleppo)を分析した。その結果、これらの地域の碑文においても、カルケミシュの碑文の通時的な変遷傾向と同様の変遷傾向が指摘できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究による言語変遷の指標となるinitial-a-finalとr転化の言語特徴が、現時点では、カルケミシュと非常に近い地域であるビート・アディニ地域のテル・アフマル碑文とアレッポ碑文に限定されるが、他の地域の言語資料の通時的な言語指標となりえることが確認できた。そこで同考察によって、カルケミシュからさらに遠方の地域の碑文言語においても同言語特徴の通時的な指標になりえる蓋然性が高まったことが推知できる。この言語指標が全ての象形文字ルウィ語碑文で確証されるならば、同言語の歴史言語学研究の大きな成果となりえる。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究の成果であるカルケミシュ碑文言語のinitial-a-finalとr転化の特徴が通時的な指標となりえること、さらに23年度の研究成果である両特徴がカルケミシュの近隣地域といえるビート・アディニのテル・アフマル碑文とアレッポ碑文においても確証されたことから、今後の展望として、より遠方の出土地の象形文字ルウィ語碑文の言語資料の中から上記の両特徴の抽出と分析によって、両特徴の通時的な指標の有効性と信頼度の検証をすることが象形文字ルウィ語の歴史言語学的な考察に必至と考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
主要な研究データ分析は従来通り、J.D.Hawkinsによる「Corpus of Hieroglyphic Luwian Inscriptions」(2000)によるが、最近も同言語碑文はトルコの各地で発見されて出版されているので、同資料の収集と同碑文に関する研究文献、研究書の購入、及びなお整備されていない未収の言語資料と同言語の関連領域の比較言語学および古代アナトリアの諸言語、古代小アジアの歴史書の文献収集を行う。
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