研究課題
今年度は本研究の中心的課題として3年間にわたり取り組んで来たウイグル漢字音成立過程の解明について、ベルリン所蔵ウイグル文字表記漢文本U5335の研究を終えた。この研究は、当初の予定通り、研究代表者の庄垣内が中心になり、分担者の藤代、国内研究協力者の菅原睦(東京外国語大学)、大崎紀子(京都大学ユーラシア文化研究センター)、さらに国外研究協力者のAbdurishid Yakup(ベルリン科学アカデミー)の5名の共著で、英文にてドイツ国から出版することができた(Chinese Text Written in Uighur Script U5335 : A Reconstruction of the Inherited Uighur Pronunciation of Chinese. 印刷中)。昨年度までに同定した資料に加えて、同じくU5335とは別のいくつかのテキスト、即ち、「菩薩禮讃文」(Mainz806)、「十方佛」(U5781)、「阿含經」(Ch/U7114)などのウイグル文字表記の漢文断片を同定し、これまでほとんど未発表であったものも上記の書籍でU5335のウイグル漢字音研究とともに出版することができた。ウイグル漢字音が10世紀代の「プロト体系」から徐々にウイグル語音化し、やがてU5335に見られるような元朝時代の簡素化した体系に発展してゆく過程を記述し、庄垣内がかつて体系として再構、提出したウイグル漢字音を検証し、その成立、発展を包括的に記述することができた。今年度は、上記の成果をとりまとめるために、国外の研究協力者Yakup氏を招聘し、共著者が一堂に会し、集中的に成果取りまとめを行う長時間にわたる研究会を数回もった。なお、研究代表者の庄垣内は、この研究の全ての過程を終えた3月下旬に疾病により他界した。
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日韓漢文訓読論集(勉誠出版)
巻: 近刊
Yarmakan, Semih Tbzcan'a Armagan, Abani Izzet Baysal University Sosyal Bilimler Enstitiusu Dergisi
巻: 13 ページ: 341-352