研究課題/領域番号 |
23520534
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
難波 和彦 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (10550585)
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キーワード | コードスイッチング / 社会言語学 / 2言語同時習得 / 機能文法 |
研究概要 |
当該年度は、国際ジャーナル International Journal of Bilingual Eductaion and Bilingualismで、特集号"Bilingualism as a First Language in Japan”が出版。これにより、日本でのバイリンガリズム研究がどのような分野をカバーし、どこまで進展しているのか、を世界の研究者に向けて発信する一助になったと考えられる。その中で、本研究の成果の一端として、Non-insertional code-switching in English-Japanese bilingual children: alternation and congruent lexicalisationという記事を発表。 コードスイッチングへの構造的アプローチとして、CSを3種類に分けるMuysken(2000)の枠組を、日本語と英語を同時に習得するバイリンガル児のデータ分析に用いた。コードスイッチングの構造の分析で、insertionは文法的な面からの分析に焦点をあてるが、alternationに関しては、語用論的、心理言語学的な視点から、より緻密な分析ができることを示した。日英のコードスイッチングにおいては、現れにくいと考えられる、congruent lexicalisationについても、実例を示して説明をすることができた。また、日本語と英語という言語類型的に距離のある言語を扱うことは、他の距離のある言語の組み合わせにも応用できると考えられ、他の言語間のCSの研究者にも、有益な一例となることが考えられる。 国内では、事務局長として関わっている第1言語としてのバイリンガリズム研究会の東京での研究会を開催し、バイリンガリズム研究の裾野を拡げる試みをさらに続けた。 書き起しは、今年度さらに13ファイルが完成。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ全体の書き起し、という研究目的に関しては、初年度7ファイルと予定よりも少なくなってしまったことを考慮し、書き起し担当者を2名に絞り、書き起し担当者の個人的な事情(海外留学、結婚-懐妊など)で予定通りにいかなかった部分もあるが、13ファイルの書き起しが完成した。 Muyskenの3つのCSのタイプと2言語発達との関連については、International Journal of Bilingual Education and Bilingualismの記事で、少し触れることができたが、さらにシステマティックな研究が必要である。 語用論、心理言語学的な視点からのモデルの構築に関しても、上記ジャーナル記事で、中心的事項として扱うことができた。 全体として、書き起しが少し遅れていることがあるが、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
書き起しについては、引き続き行っていくが、ただ単にコーパスに含む量を増やすのではなく、必要最低限の書き起しをすることをめざす。これまで20ファイルが完成したが、各年度、これに10ファイルずつ加えていき、5年間で50ファイルの書き起しを目標とする。 シンガポールで行われる、バイリンガリズムの分野で最大規模の学会、International Symposium of Blingualismでの発表が決まったので、そこでSystemic Functional Grammar (選択体系機能文法)のフレームワークを使ったCSの分析方法を発表する予定。他の国の研究者からの意見を仰ぐ。またSFGを使った研究についての論文の発表も目指す。 バイリンガリズム研究そのものの裾野を拡げることを目的に、第1言語としてのバイリンガリズム研究会のメンバーで、一般向けのバイリンガリズムの教科書を執筆中。この中で当研究の成果を、わかりやすい言葉で、研究者、学部生、教員を対象に説明をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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