研究課題
本研究では、政治家の言語使用を主に戦後からの通時的な観点から記述、分析するものである。最終年度、及び研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、今までの研究実績をふまえ、特に、「力」のことばから「仲間意識」のことばへとシフトしてきているのではないかという仮説を裏付けるものを同定しながら、研究を進めた。その結果、ことばの表面的、形式的な側面(語尾、文末表現、語彙)だけでなく、内容分析(話の内容、何について語っているか)の側面からも、「仲間意識」のことばが見受けられることがわかった。特に、話し手が自分の主義、主張を一方的に述べる、講義をする、というスタイルから、聞き手の心理的、物理的状況を意識しながら「聞き手中心」に述べる、さらに聞き手の認知スタイルに合うような手法、具体的には「物語」の手法、ナラティブの手法、「喩え」の手法があることがわかった。さらにこの「聞き手中心」を象徴するものとして、スピーチアコモデーション(speech accommodation)、つまり聞き手、聴衆の話のスタイル、語彙の特徴等を生かしたスピーチ、さらには方言、レジスターの活用といった点からも、「仲間意識」のスピーチスタイルが増えていることが観察された。このスピーチスタイルは、震災直後の政治的リーダーと象徴的リーダーとしての天皇のスピーチの対比においても、特徴としてあげることができる。この観点からの研究は、国際学会、さらに論文の一部として、発表することができた。さらに、最終年度に使用可能となった音声資料として、戦前、戦中のスピーチも加えて研究することができた。具体的には、尾崎行雄、永井柳太郎などの戦前を代表する政治家などについても、その実際のスピーチ、さらには言語使用に関するその著作(『雄弁学講座』)なども検証することができた。これらの研究成果をもとに、現在、論文執筆(英文、日本語文)を進めている。
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Rebuilding Sustainable Communities after Disasters in China, Japan and Beyond
巻: 1 ページ: 203-224