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2012 年度 実施状況報告書

日本語史研究における抄物資料の活用促進のための研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520547
研究機関筑波大学

研究代表者

坪井 美樹  筑波大学, 人文社会系, 教授 (40114300)

キーワード国際情報交換 中国
研究概要

本研究は、中世後期の日本語資料である抄物資料を、より多くの日本語研究者による多様な研究目的に即した利用を可能ならしめるために、抄物資料成立の場や状況、その言語の性格を解明し、一般にわかりやすく共有できる情報として提供することを目的とする。
平成24年度は、上記の目的に沿い、以下の3点を中心に研究を進めた。
①23年度(科研費による助成初年度)助成金により購入した、『人天眼目抄』を通読・精査して、足利本・東大史料本の記述を比較対照しつつ、講義実施の季節・日時と講義の内容・言語表現との関係から、講師である川僧慧済の『人天眼目』講義の場の実態を伺わせる資料の収集に努めた。
②助詞相当の「ヲチ」並びに軽い敬意を表す助動詞「シム/シモ」という抄物に特徴的な語の使用について、集成抄物(取り合わせ抄物)である『三体詩幻雲抄』とやはり23年度に助成金で購入した『四河入海』から用例を採取し、その使用者と講義内容との関連についてデータ蓄積に努めた。
③近代日本語における授受表現体系の成立に関して、抄物資料が重要な情報を提供できる可能性を持つことに研究の意義を見出し、当初の研究計画には明記してないが、授受表現の用例を抄物資料中から収集し、広義の待遇表現の変化として、古代日本語における敬語体系に替わるものとして近代日本語における授受表現体系の成立があったのではないかという考えをまとめ、中国の抄物研究者と直接意見交換を行うとともに、当該研究者の勤める北京師範大学において開催された学術交流フォーラムで口頭発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

交付申請書の当初計画では、平成24年度終了までに①「抄物成立の場の具体的状況」②「抄物における講述調文体の口語性の特質」の2点について解明し、それぞれについて論考を公開する予定であったが、現段階では、まだ①「抄物成立の場の具体的状況」解明のための資料収集が完了していない。理由としては、勤務先大学における管理運営業務と国際教育プログラム統括業務に追われ、充分な研究時間が確保できないための研究の遅れと、データ整理補助作業に雇用を予定していた中世日本語史を専門とする大学院生の雇用が出来ずデータ整理作業が遅れたこと(専門的知識と文書解読力を必要とするため、他の人員では代替できなかった)、さらに、当初の計画では調査事項としては想定していなかった「抄物資料による授受表現体系成立の解明」という新しい研究テーマに学問的興味が生まれ、新たな調査・研究に取り組んだことの3点による。論文としての研究成果公表も23年度は2件の論文を公表できたが、24年度は口頭発表1件にとどまった。

今後の研究の推進方策

研究の最終段階(科研費助成最終年度)として、本研究をまとめるが、これまでの研究の若干の遅れを考慮に入れて、成果発表形態を実現可能な形態に絞り込んで研究費の有効使用を心がけ、本研究の根本的目的である「抄物資料がより多くの日本語研究者に利用可能となるような研究ガイド」として役立つかたちで以下3点の研究成果の公表を目指す。
①『人天眼目抄』等を例とした「抄物成立の場」を具体的に解説した論考の公表。
②『三体詩抄』等を例とした抄物の講述文体における「口語性」の特徴を解明した論考の公表。
③抄物資料による「授受表現体系の成立」に関する論考の公表。

次年度の研究費の使用計画

雇用を予定していた中世日本語史を専門とする大学院生が体調不良と学生本人の研究遂行のためにデータ整理作業に雇用できず、そのために「次年度使用額」として未使用で繰り越されている人件費・謝金から次年度にはデータ整理作業のための大学院生の雇用を行い、論文原稿の作成、研究のまとめの加速化を図る。また、旅費を使用して中国人研究者・韓国人研究者と相互訪問して意見交換を行い、「研究ガイド」としての研究成果の有効なまとめ方を模索する。最後に、研究成果報告書を作成して研究成果を学界に公表し、広く研究者の利用に供する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 日本語における敬語表現と授受表現の歴史的変遷

    • 著者名/発表者名
      坪井 美樹
    • 学会等名
      第2回北京師範大学・筑波大学学術交流会
    • 発表場所
      中国 北京市 北京師範大学

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公開日: 2014-07-24  

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